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「ううん、ごめんね桜木君…呼んでおいて……」


優子は初めてまともに口を開いた。


「いえ!!お気になさらずに!!女子の方々とお話しできることは光栄ですので!!ハハハハハ」


あーもう焦れったいなぁこの二人は…!
もっと実のある会話をせんか。進みゃしねぇ〜!!
もう桜木、優子を抱いちゃいな。抱きしめちゃいな。って展開早すぎ?


どこまでも内気な友と、いまいち積極性に欠ける桜木を見兼ねた私は強行にでることにした。




そう、私は後押しを。



少し強めの後押しをしてあげた。優子の背中をドンと押して。ウブな男女にはキッカケが必要なんさ。始まりには何にでも、ちょっとしたアクシデントが必要なんさ。

きゃあと小さく声を漏らして前方にグラついた優子は、私の狙い通りにしっかりと桜木にキャッチされていた。


「のわぁーっ!!!」


倒れてきた優子を?


「どうしました?!」


キャッチして?


「あわわわわスイマセン!!!」


許可なく触れてしまい慌てて、離す、と…。


キャアって、何て初々しい反応…。優子と私じゃ根本的なとこから違ってんだろうなと思う。

「で、アンタらは見学かい」


教室に備えられた窓から、ヒゲ、ダルマ、金髪、リーゼントが顔を覗かせて目をキラキラと輝かせてますけど…。


「花道コラー!!ついにやらかしたかー!!」と金髪。
「発情すんなよ〜!!」とヒゲ。
「さっきの菓子パンの怨みは忘れねぇぞ!!」とダルマ。
「あーあ岡島ちゃん泣いちゃってんぞー」とリーゼント……って、うそ。


あ、ホントだ…
やば。まずったかも、私。


「いや違う!!!今のは事故だ!!!」
「そ、そうなのよ…今のはアクシデント…」


優子は桜木の胸にしがみついたままだった。


「花道!!土下座して謝れコラー。ギャハハハハ」
「し、静かにしたまえ!!優子さんが怯えてらっしゃるだろうが…!!」
「優子…あんた。泣いてんの?笑ってんの?」


なんか様子が変だなと、横から覗き込んだなら。優子は肩を震わせて、泣きながら笑っていた。


チャイムが鳴って、私も桜木も救われたけど、優子は授業が始まってもニコニコと、機嫌が良かった。


私は密かにメールを送る。


“さっき、ごめんね…m(__;)m余計なことまでしちゃって”


私のメールに気づいて、こっそり携帯を打つ優子の横顔は、やっぱり笑顔で。



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