[14]悪ふざけ
また静かに流れる沈黙……。会話する気なし?ってな胸の内を秘めて見つめたら、流川君と目が合った。
「なんでここに止まってる?」
今度は口に出してそう言われた。
...やっぱり突っ込まれるとこだったか...。
けどそんな野暮ったい質問をされると焦れてしまう。
「流川君さ……空気読まないというか読もうとしないね」
「……」
色気のない会話どころか会話すらまともになくて、目が合えばこんな風に睨まれたんじゃ地味に傷つく。
「そんな怖い顔しないでよ……」
「……。送ってくれてどーも。じゃ、俺はこれで」
流川君は感謝の言葉としては到底受け取れないような台詞を淡々と口にしてから背を向けた。言葉を失った私が、もしかしたら今までのは寝たフリだったんじゃとか、今までのは彼なりの照れ隠しだったんじゃ?と勘ぐったのは、流川君が一端停止してからのこと。
カコ、と耳に届いたのは気のせいじゃない。現に流川君は未だ車内に留まっている。
「ロック掛けたまんま開けようとしても扉は開かないですよー…」
忘れていた、にしては可笑しな流川君。だってそうと分かったならロックを外してさっさと出ちゃえばいいのにそれをしないでいる。
「もしかして緊張してたの?」
「るせぇ殺すぞ……」
「ぶ、物騒な!」
心なしか私に対する態度が徐々に高圧的なものになっているように思うけれど...照れ隠しなんて一つボロが出れば後は隠しようがないし、それに気付いた私はそれをどんな風に捉えるべきだろう。
「………」
逞しくも広い背中を向けられている私は、流川君が留まっている間にも憶測を巡らせてしまう。行かないの?と聞けば、きっと弾かれたように去っていくだろうと思う。なんで行かないの?と聞けば、望む応えが返ってくるだろうか?
全ての判断を私に委ねているこの背中に、そっと手を伸ばして触れてみた。
「キスしよっか」
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半分本気の悪ふざけ
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