[3]かっこいい男の子
AVショップ女店員
▼夏樹side
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私の職業はキャバ嬢兼AVショップの店員さん。キャバクラだけで十分お金は稼げるけれど、ここは知り合いのお店だから、特別に手伝いでたまに入ったりしている。
小さな店だから、雇われは私一人だけ(もう少し人手が欲しいと今回の募集に至る)。
その知り合いというのがこの店の店長をやっていて、彼は過去、私の店の常連客でもあった。通称、井上ちゃん。
今じゃすっかり家庭を持つどこにでもいそうなパパだ。
そして、
25でキャバ嬢をやって、自由気ままに生きている私の
良き理解者でもある。
それにしてもこの店は、相変わらず変な客ばかり来る。キレたことが何回あったか……。まぁ場所が場所だし(ラブホテル隣接地帯)、時間が時間だし(深夜営業)...。
何より、AVショップだから仕方ない。
もうこの店にも馴染み、いろんなことに慣れてしまったけど。
ぼんやりしていると、電話のコール音が鳴り響いた。
「はい、ビデオショップJE…『バイトの面接受けたいんですけど』」
お、好い声。私は吸いかけだった煙草を灰皿に潰した。
「面接ですね。今店長に代わりますのでお待ち頂けますか?」
受話器の向こうの好い声の男の子が応えたのを聞いて井上ちゃんを呼んだ。
「井上ちゃーん面接希望者から電話ー」
はいはいと奥から現れたのはちょっぴり恐面の井上ちゃん。
応対を任せて、会話を、隣でなんとなく聞いていた。
井上ちゃんがメモを取り始めたのでそれを覗き見る。
るかわかえで18歳……
変わった名前。しかも若いなぁ!関わりないわ〜……この年齢層。だいたいが20代から40代で、上は果てしない……。
ふーん、かえでくんかぁ。
お姉さんが可愛いがってやろうかな、なんて。
応対を終えた井上ちゃんが、私に笑顔を見せてくる。
「良かったなー夏樹。若い男で!大学生だと」
「うひゃ〜大学生かぁ」
ケラケラと笑う私に、井上ちゃんは後付けした。
「今から来るよこの子」
「え、面接に?」
「今日これから面接でもいいですかって言うもんだからさ。いいよね意欲的で。もう合格なんだけど」
確かに。うちに合否を決めるような堅苦しさはなくて。来る者は拒まない。そんな井上ちゃんの人柄の良さに惚れて私もこの店にいる。
「イケメンだったら最高なんだけどね〜」
「またお前は……バイト君を食うなよ?」
「冗談じゃん」
当たり前。男はもうお腹一杯だってば〜。へらっと笑ってレジにやって来たお客の会計を手際よく済ませる。
「ありがとうございましたぁ」
営業スマイル完璧!そしてまた暇ー…。まぁこんなもんよ。レンタルショップが混雑することはまずなくて
忙しくなるのは大体が休日で。私はいつものように携帯アプリでゲームを始める。暇な時間が多いから、暇を潰すのも上手くなったと思う。
ゲームに熱中してどれくらい経ったか、来店者の気配がしてポーズする。ふぅ、もうこの辺にしとこ。白熱すると止まらなくなるんだよね…、で入り口の方を見たけれど誰もいない。
気のせいだったかな?
首を傾げていると。
その人物はちらりと姿を覗かせた。とても入るのを躊躇しながら。
その人物の姿を見た瞬間、私は目を奪われた。
綺麗な子………、あ、いけない。つい見とれてしまった。
「いらっしゃいませ〜」
ちょっと顔を傾けて、入り口に突っ立っている人物に微笑みかけた。
それでも躊躇して奥まで入ってくる気配がない。あれ?もしかして。バイト君?
なんとなく感付いて声をかける。
「面接の?」
「……。はい」
「あ、ごめんなさい。お客さんかと思って。こっちにどうぞ」
私が微笑んで見せると遠慮がちに店内に入ってきたそのバイト君は、ともかく背が高かった。それに見たことのないタイプの男前さん。
切れ長の目はしっかりとした意志の強さを思わせて、黒い髪に、アクセサリーやその他の装飾を一切施さないファッションは、清潔感があって、好青年そのもの。
久しぶりにかっこいい男の子を見た気がして、私の期待が大きく膨らんだ。
なんといっても声がタイプ!
私は生粋の声フェチだ。
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