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 私は岡島優子。特にこれといった特技も取り柄もない・・・ごく普通の高校一年生。
友達が誰を好きだとか、誰に憧れているとか、そんな話で盛り上がるなかで
私はいつも上の空でそれを聞いていた。
だけどあの出来事を堺に、私には、気になる人ができました・・・。

 DOKI DOKI


 キーンコーンカーンコーン
次の授業の始まりを告げるチャイムが鳴る。次は英語の小テスト。そしてそれが終われば放課後である。
教室内のざわめきの中で、ため息混じりの男子の声。ふと声の方を見ると、赤い髪の桜木君を囲んでいた
数人の男子がこちらに向かってくるのが分かった。

「花道よー、次テストだぜ?大丈夫か?」

 桜木君は寝たまんまいっこうに起きようとはしない。はぁ、テストか・・・。
教卓の方へ向き直ろうとしたとき、手元から何か落ちるのが分かった。あ!
っと思ったときにはもう遅くて、大きな音を響かせてそれは床に叩きつけられた。

 カシャーン!
落ちたのはプラスチック製のペンケース。一瞬だけ教室が静まり、私は赤面した。

「・・・ぬ?」
「おおっ!?」

 ガコッ!
腕がペンケースを払った勢いのまま飛ばされて、誰かの足元で止まった。
高宮君がバランスを崩したのと同時に、破壊音がこだます・・・。目線はゆっくりとその一部始終を辿っていた。
けっこう大事にしていたペンケース、壊れちゃった。その悲しみよりも、恥ずかしさの方が優っていたけれど・・・。

「あーあ高宮おまえなにやってんだよー」
「あっ、いいの。私が落としたんだし・・・気にしないでっ」

 慌ててペンケースを拾おうとして、床にしゃがもうと姿勢を低くしたとき、視界が薄暗くなり影に覆われるのが分かった。
何かとんでもなく大きな圧力に、上から見下ろされている感覚。私の目は見開く。見上げたら、
さっきまで寝ていたはずの彼が、なぜかそこに立っていた・・・。

「何事だー?この天才桜木花道の・・・
部活前の貴重な睡眠が妨害されたぞぉー!!」
「さ、桜木君」
「・・・ぬ!」

 目と目が合う・・・。目をそらせない私に、なぜだかほんのりと頬を染める彼の姿がそこにある。大きい・・・。

「あ、あの」
「高宮がよーまたやらかしちまったんだよー」
「お、俺しーらないっ!!」

 そう言って走り去っていってしまった高宮君。

「あ!あんにゃろー」

 壊れてしまったものはしょうがないもの・・・。
けど中身は無事かな。これからテストがあるのにどうしよう・・・。

 私は少し落ち込んで、無残な姿になったペンケースを見つめた。桜木君はそれをそっと
手に取ってから、私の方を一瞥して、また視線を戻す。知ってはいるけど圧倒される大きな体。
太い首筋、広い肩幅・・・。他の男子が平均的な体格だとして比べても、はっきりとしている体格差。恵まれた体格。
制服の上からでも分かる引き締まった体。足なんかスラッと長くてスタイルが良い。
顔も、こうして良ぉく見れば、整っているし凛々しい。目元はどちらかと言えば切れ長の・・・凄まれると怖いけれど、・・・綺麗な目だなぁ。
見た目だけじゃなくて身にまとうオーラが、彼のいる空間までもがキラキラしている。ように思う。



「う〜ん。べこべこだ。こりゃもう使えそうにも・・・」
「いいの。大丈夫。ありがとう、・・・桜木君」

 そっと手を差し出すと、彼は私にペンケースを手渡した。桜木君とまともにやり取りするの、はじめてかも。緊張した...。






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