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初対面.2


 端正な顔立ちの彼は私の方を見るとゆっくり近づいてきた。額の大きな切り傷にハッとする。繊細な作りの顔には似つかわしくない傷。

(流石プロの傭兵だけあって貫禄があるわね……)

 よほどの修羅場を潜り抜けてきたのだろう。それにしても綺麗な顔だ……額の切り傷が更にその容姿を際立たせているように見える。

 学園長に“スコール”と呼ばれた彼は、少しも変わらない表情で私の目の前に立った。

「シエンナです。宜しくお願いします」

 私が自己紹介をして握手を求めると、彼も快く応えてくれた。

「スコール・レオンハートだ。こちらこそ宜しく」

 そう言って軽く会釈した彼は少し冷たいと感じるくらいに表情も変えず、終始冷静沈着といった様子だった。手も心無しかひんやりとしていた。声色も落ち着いたトーンでいて、第一印象としては“クールな男”といった感じで好印象だ。

(ますますタイプかも……)

 好奇の眼差しでまじまじとその彼を観察していたら、先程から送られてくる熱い視線に気付いてチラリとそちらを見た。

 長い黒髪の似合う色白で華奢な可愛らしい女性がしきりにこちらを気にしている。この人もSEEDなのだろうか。その傍らにはセルフィがいる。とするとやはりこの黒髪の女性もSEEDなのだろう。

 初めは然して気にはしていなかったけれど、彼の一言でそれは一変した。

「あとで会いに行く」

 そう言われた彼女の反応も明らかに“女”の表情で。二人がそういった関係であることにはすぐに察しがついた。沸々と胸の奥にわき上がる複雑な感情が鋭い視線となって、自然と黒髪の彼女に注がれる。

 けれど彼女は私の視線を難なくかわして「スコールの部屋で待ってるね」と彼に向けて告げると、部屋を後にした。部屋を行き来するほどの間柄なら私の入る隙間などない。早くも“アンタが手の出していい男じゃないのよ”と宣告されてしまったわけだ。

 そうなると俄然燃えてしまうのが私の昔からの悪い癖で……。

 どうしても彼、スコールのことが気になって堪らなくなってしまった。



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