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らしくない自分


 スコールは躊躇いがちだった両手を、リノアの背中にそっと添える。

 そして一人の女の子にこうして優しくする自分を、もう一人の自分が冷ややかな視線で見ていて嘲笑している。分かってはいるのだ。“らしくない”なんてことは。らしくなくなったのは今に始まった事じゃない。何度抱きしめようとする寸でのところで手を引いたか知れなかった。


「もっと強く抱きしめて……」

 スコールは言われたように強く抱きしめる。細い体だな、と思った。この細い体で、自分と同じように戦ってきたのかと思うと酷く健気に思えた。

 腰のあたりなど少し力を加えれば折れそうなほど華奢だ。強く抱きしめれば彼女の柔らかな肉体を通して鼓動が伝わってくる。その心地良い振動に暫く身を寄せていたが、スコールは理性で動く自分とは違う本能に訴えかける自分に気付き、慌ててリノアを引き離した。


「もういいだろ」

 そうスコールが呟いたあと。リノアの視線とぶつかるより早く、扉を叩く音が静かな部屋に響いた。



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