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足りない何か


 リノアは、自分の言おうとしていることをスコールがもうすでに理解していて、そしてそのことに苦しんでいるのだと分かってしまったから。その先は言わなかった。

 もう彼を、スコールを責めるようなことは言わないでおこうと。スコールは不器用のままでいい。そんな彼を愛してしまっているから。


「スコールはね、私ばっかりこんなに好きにさせてズルイって言ったの」

 そう言ってリノアは笑う。

 スコールも自分の間違いに気付き始めていた。いや、もうずっと前に気付いていたのかも知れない。自分の中の邪念……感情を押さえつけるばかりがSEEDの在るべき正しい姿だと思い込んでいた。抑制し過ぎてうまく動けずにいたのだと。

 徹底した合理主義のスコールには、リノアの言動が分からなくなることがあった。けれど今になってようやく、彼女の気持ちが理解できたような気がした。


 人間は、バランスをとろうとするようにできているのかも知れない。リノアに惹かれたのもきっと、自分にないものを彼女が補ってくれる気がしたから。スコールはそう思った。


「俺はどうすればいい」

「……スコール、寂しい時は悲しい顔をするものでしょ?
嬉しい時には笑う。哀しい時には泣いたって構わない。人ってそうゆうものでしょ?正確な機械なんかじゃないんだから……感情は都合よくコントロールできないよ。人ってそんなに強くないんだよ」


 人は、一人で生きてはいけないんだよ。






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