[通常モード] [URL送信]
守るべきもの


「こうしてるとあの時のことを思い出すな」


 あの時……それはスコールにも分かった。

 宇宙に放り出されたリノアを救出した時のこと。あの時も確か、こんな風にして彼女を抱き締めた。あの時は宇宙服のおかげでリノアの体温を直接感じることはできなかったけれど、今はしっかりと肌で感じることができる。

 宇宙は地上から見上げた夜空とは全くの別物だった。今見上げている柔らかに瞬く星たちとは違う。あそこでは凍りついたように冴えた星々が均一な光を放ち続けていたから。

 宇宙は本当に寂しく、恐ろしい場所だった。何よりも圧倒的な孤独が全てを支配していた。それは永遠を想わせる無限に広がる暗闇の世界。

 温もりだったり、声だったり、生きている感覚を奪うには十分な世界だった。

 スコールの中でリノアを失いたくないという気持ちが爆発したのは間違いなくあの時だろう。リノアを宇宙に奪われるか、腕の中に取り戻せるか。スコールに迷いはなかった。あの時リノアを永遠に失うのではないかという恐怖がなければ、自分の気持ちに気付くこともなかったかも知れない。



[前へ*][次へ#]

9/15ページ


あきゅろす。
無料HPエムペ!