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出会いは唐突に



今日はだめだ
今日はちゃんと言わなければ...


フリオニールは、夜も更けた頃
一人己自身に誓っていた。

あれは昨日の出来事…
フリオニールが街外れまで野暮用で出かけた日のことだった。

「さて、買い出しも済んだし…
早く帰って武器の手入れをしなくちゃな」

フリオニールは、野暮用ついでに立ち寄った備品屋を後にする。

そして来た道を足早に歩いていると
何やら揉めている声が聞こえてきた。

「ん?なんだ?」

フリオニールはそこを通りがかる。
すると…

「なによ、触るな!ヘンタイ!」
「ケッ。威勢がいいねぇ。けどな…飯食わせてやったんだ。礼はちゃんとしてもらわないとな」
「離せヘンタイオヤジ!」
「…。口は悪いがなかなか可愛らしい顔してるし、
俺が飼ってやってもいいぜ…」

フリオニールの視界に入った見すぼらしい少女と、いかにも喧嘩っ早そうな男。男は少女の腕をつかんで、
どこかへ連れ去ろうとしていた。

「イヤだ!はなせ!はなせバカヤロー!誰か助けてよー!」

少女が無造作に伸ばされた肩までの栗色の髪を乱して叫ぶ。
フリオニールは咄嗟に駆け出していた。困っている人を見過ごすことができない性分だからだ。

周りの通行人はみな、
気にかけはするのだが助けることまではしない。通り過ぎていくだけである。

「やめろ!嫌がってるじゃないか!」

フリオニールが少女と男の間に割入るようにして立つ。

「なんだあ?兄ちゃん、邪魔すんなや」
「助けてお兄さん!こいつ、私のこと連れ去って売りさばくつもりなんだ!」

少女はフリオニールにすがるように叫んだ。

「何!?人攫いか…
ますます放って置けん!」

少女の表情が、ぱぁっと明るくなり嬉々とする。男は面白くなさそうに舌打ちをした。

「兄ちゃん、あんたも正義漢ぶってよ、ほんとはこいつを持ち帰って良いようにしようってんだろ?横取りはよくないぜ」


「な…っ、俺はそんなつもりは…!」
「そうだ!このお兄さんはオマエみたいなヘンタイじゃないんだからそんなこと!」

少女が食ってかかる。

「あのよ、なんか勘違いされちゃ困るから教えといてやるがよ。
元々、このガキの方から誘ってきたんだぜ。俺はその対価を支払って貰おうとしたまでよ」
「………そうなのか?」

フリオニールが少女を見る。
少女はふるふると首を横に振ってなおも叫んだ。

「ちがうっ、食べ物を分けて貰おうとしたらこいつが!私は何にも悪くない!」

フリオニールは男と少女の間に割って入っていたが、どうやら現状は板挟みだったようで困惑する。
そうすると、別の男がやって来た。

「なぁ、色男の兄ちゃん。
ここらじゃ見かけない顔だが、このガキのこと知らないのか?」

別の髭面のむさ苦しい男が言う。

「どういうことだ?」

フリオニールが問う。

「このガキはな、ここらでは有名な家無しの盗人よ。孤児で親がいねぇから家もねぇ。だからここらに住み着いてんのさ」

フリオニールは、ぐっと息を詰めた。
少女は俯いていたが、勢いよく顔を上げると髭面男を睨んだ。髭面男はそれを見下ろして続ける。

「こいつはスリの常習犯だし、モノ欲しさに平気で嘘もつく。俺もこいつに幾らかスられてる。あんたもこいつを助けるなら、その優しさに付け込まれないようにするこったな」

髭面男はそう言うと、三人を通り過ぎて人混みの中へと消えた。

フリオニールは少女を見る。

「ほんとうなのか?」

少女は黙ったが、すぐに口を開いた。

「さあね…」

次に、最初に揉めていた相手の男が言った。

「聞いただろ?そういうこった。
だいたいタダで食い物を分けて貰おうってのが間違いだ。ちゃんと支払ってもらわないとなぁ?兄ちゃんも男なら分かるだろう?」

フリオニールは、男の胸ぐらを掴む。

「お前のような下衆と一緒にするな!」
「な、なんだぁ!?正義漢ぶるのもいい加減にしろよ、痛い目みたいのか!?」

二人が殴り合いにでも発展しようとしたとき、少女がフリオニールの手を握った。

「おねがい。私を連れ去って!
お兄さんなら……」

少女はフリオニールの顔を、じっくり観察する。フリオニールの目は点だ。

「お兄さんなら、信じられる気がする!」

そう言って、フリオニールの手を強引に引っ張る。

「あ、おい…っ、どこへ……」
「ここから離れよう!来て!」

少女はフリオニールの手を引いて走り出した。フリオニールも引かれるまま走り出していたが、いつしか自らの意思でも走っていた。

背後で男が汚い罵声を浴びせていたが、それも遠くなっていく。




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