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ふたりきりで暮らし始めた(途中)



夜、マミヤがキッチンで食器を洗っていたときのこと。
普段よく、まとめ洗い(食器を溜め込んで夜にまとめて洗うことの意)をするマミヤだったが、今夜は何やら気にかかることがあったらしく形の良い唇を可愛らしく尖らせていた。

「レイー?ちょっと来てくれる?」

スポンジと真っ白な皿を片手ずつに持って
振り向き加減に後方へと声をかける。

レイは食卓を前に椅子に腰掛け新聞を読んでいたがマミヤに呼ばれたことで伏せていた顔を上げて、新聞を畳もうとする。

「なんだ?」

マミヤの元へとやって来て彼女の隣に立つレイ。マミヤのエプロン姿はとても様になっていて、どこからどう見ても新婚ほやほやの二人に映ったが、二人は同居しているものの、まだ未婚だった。
とは言っても、家事をするのはマミヤなので新婚生活と何ら変わりはないのだったが。

「あのね」

とマミヤ。

「うん」

とレイ。

このお皿…と、マミヤが続けてレイに見せ、レイもその皿に視線を落とす。

「油でギトギトでしょ?今日の晩に食べた肉と野菜炒めの」
「ああ」
「シンクにそのまま浸けちゃうと、油がシンクにも付いて余計に油まみれになっちゃうの」
「ほう……」

マミヤがスポンジをわしわしと泡を馴染ませるようにして揉んでいる。

「だから出来ればシンクに付ける前に汚れを水でさっとでいいから濯いで…
それから洗剤を数滴垂らしておいて欲しいのよ」
「うん」
「そうすると洗うとき楽なの」
「分かった」
「お願いね、レイ」
「ああ」

こうしてさり気ない会話が終わり、マミヤが向き直って食器洗いを再開させる。
気分が良いのかマミヤの鼻歌が聴こえてくると、レイはぼんやりとマミヤの柔らかな表情を見つめ、ふと抱きしめたい衝動に駆られた。
思えばすぐに、マミヤの体を抱きしめるレイ。マミヤは少し驚いて目を大きくさせて、レイの体の重みにより前屈みになる。

「レイ……?」

もう何度も感じたことのあるレイの腕の筋肉の逞しさ、力強さだったが
こうしてふいに抱きしめられるときは、マミヤも少なからず動揺して、胸の鼓動も忙しなくなった。
レイの腕はマミヤの腰回りに絡みついていたが
それが緩やかに解けると、今度は熱い手のひらが徐々にせり上がってゆく。その甘い感触にマミヤはレイの腕の中でくすぐったそうに身をよじった。




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