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「ほんとここ最近いつも一緒にいるねぇ、リノアと班長〜っラブラブぅ〜」

 語尾をやたらと伸ばして音符マークでも付いていそうなほど弾んだ声を寄越すのは……

「やだセルフィ〜」

 …一人忘れていたな。そういった話題で盛り上がるのは女子の間だけでしてくれ。俺は付いていけそうもない。先刻の件から小一時間は経過したと思うが、カルガモの親子状態は解除されず。けれど約束は守らなければならない。“戻ったらアンタの好きなだけ一緒にいるから”

 食堂で皆と戯れていたが、取り巻きに囃し立てられるのも無駄に体力を奪うので俺はリノアを連れて(付いてくるのだが)場所を変えることにした。寮なら俺も周りの目を気にしなくて済むだろう。




 ああしかし……どうして女という生き物は、こうも引っ付きたがるのか。

 好きだという気持ちは俺もリノアと変わらない。なのに表現の仕方がまるで違う……。こんな風に触れ合っていなくても、心はいつもリノアの側にあるというのに。俺はすぐ隣で体を密着させているリノアを見つめた。

なぁ、アンタはそんなに俺と一緒にいないと不安なのか……?口に出しては言えなくても、伝わってくれるといい。俺はどこにも行きはしないと。俺の心はアンタに一途だ。




「スコール?」
「なんだ」
「ずっと黙って見つめてくるから……」


 こんな風にされて小言を溢したくなる時もあるけれど、嫌な訳じゃない。それはアンタに好かれていると自信を持てるのが嬉しいからなのか。他人から不器用だと言われる俺だからこそ、そういった面では救われているのかも知れない。

 アンタは俺に触れたいと思うから触れてくる。俺もアンタに触れたいと思ったら……。この澄んだ瞳が、俺の続く言葉を待っている。それが愛しく思えて髪を撫でた俺の行動も、リノアのそれと同じものなんだろうな、きっと。

 そう考えたらアンタの数々の言動も喜んで受け入れられる気がする。


「ねぇ、ハグハグして?」
「ああ」


 俺がすんなりと応えたのがそんなに驚くことなのか、抱擁を求めたはずの本人が赤面している。ああ、こういうことか。人を愛すということは。俺は自分から体を寄せたくなり、リノアを抱き締める。

自らの腕で愛する人の体を包むという行動は、こんなにも心地好い。


「どうして黙ってるんだ」
「だって……スコールから抱き締めてくれることなんて今まであったかなぁって……」
「あんたがそうしてくれって言ったんだろう?」
「そうなんだけど……っ」


 今のアンタは普段の俺なんだよ。これで少しは俺の気持ちが理解できたか?俺が今までどれだけ気恥ずかしい想いをしてきたか。俺の気持ちをリノアが分かってくれたら嬉しい。表情が緩むのを止められなくて、どうしてか離したくなかった、今の俺は。


「スコ〜ル〜…っっずっとずーっとこうしてたい」


 リノアは思ったままの感想を直接伝えてくる。その力がどんな相手でも心を開かせるんだろう。人を幸せな気持ちに出来るのはリノアの才能だと思う。俺はリノアの側にいて明らかに変わったが、俺の本質は変わらない。ただ、愛することの喜びを知った。

 触れたいと思うようになった。もっと話をしたいと思うようになった。



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