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 前よし。右よし。左よし。
…いないな。これが最近の癖になりつつあるのは他でもない。リノアの過剰なまでのアレを避けるためだ。ともかく今はいち早くRest roomへ(トイレと言えない男)…。

「ス、コ、ー、ル?どこ行く気〜?」

 し、しまった…!背後を取られたか…!後ろの確認を怠っていた…俺としたことが何たるミスを。リノアに一度捕まると、もうその日一日は逃げられないというのに。例えるならばカルガモの親子のように付いて回られるのだ。この場合、俺がカルガモの親でリノアは俺の子だ。いやこんな手のかかる子を産んだ覚えはないが……いやそもそも産めないが。

「スコール!ぼーっとしないで!」
「…はい」
「どうしていつも置いてくの?いつも二人一緒に行動しようねって言ってるのに…」


 そんな目で見てくるなよ…。その前に、だ。

「アンタはどこまで付いてくる気なんだ?俺はな……」

 リノアの両腕を腰に巻き付けたまま、ズルズルと目的の場所へと引きずって行く。こんな強行にでようとも離れる気配がまるでないのがリノアの恐ろしいところだ。


「あれ、スコール、トイレ行きたかったの?」
「そうだ」


 分かったらさぁ離れてくれ今すぐに。戻って来たらアンタの好きにすればいい。だから今は離れ……

「じゃあ私も行く」

 今のは空耳か…?俺はもちろん慎重に聞き返した。リノアの目を見つめ、「男子トイレ(興奮してついトイレと口にしてしまう……)に付いて来ると言ったのか?今」と。そして事もあろうかリノアはそれがさも常識であるかの様に……


 「私が一緒じゃ駄目なの?何か問題でもある?」
「大有りだ!いやむしろアンタの思考回路こそが大問題だ……」


 俺だってリノアの気持ちは理解しているつもりだ。恋人なのだから常に行動を共にしたい気持ちも…。しかしだ。ここまできたら完全にプライバシーの侵害で…と、俺が心の中で必死の抗議をしている間にリノアはさっさと入って行ったんだが。男子トイレに。頼むから心の中でこんなに長々と喋らせないでくれ……心の中だとついつい小言が多くなってしまうんだよ俺は。

「スコール、しないの?」

 …色々と突っ込みたいことは山ほどあるが、疲れるだけだから止めておく。


「リノア、アンタの気持ちは良く分かったから。だから頼む。今の間だけは外で待っていてくれ。戻ったらいくらでも一緒にいるから」
「わ、スコールがいっぱい喋った……!こんなに沢山喋ったの久しぶりじゃない?」
「………」


 もういい。埒があかない。俺は怒るのも面倒になり、リノアを摘まみ出した。そして近くを通った男子生徒にリノアを見張るように指示し、絶対に離すなよと強く念を押した。自分でも口調に少しトゲがあったように思ったが……俺だって被害者の一人なんだ。

 通行人に八つ当たりはよくないのは分かっているが俺もそう気の長い方じゃない。背後でリノアが何か言っていたがもう耳には蓋をした。



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