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「分かった……。じゃあ御託は抜きにして率直に聞く」
「うんっ聞いて聞いてっ!」


 長い長い沈黙だった。いつまで待たされるんだろうって思う程の。その間にも、みるみるうちに頬が赤くなっていくスコールに私は心底驚いた。だって見ているこっちが照れるぐらいに、スコールは一人で見えない何かと戦っているんだから。例えるなら、天使と悪魔に囁かれて、応えを言いかねている、そんな表情。

「今日は……泊まっていかないか」

 スコールが振り絞って出した応えに私は全身の力が抜けていく浮遊感を覚えた。もうじっくりと君の赤い顔を観察する余裕なんてない。ねぇそれは……天使が勝ったの?悪魔に唆されたの?

「そんな顔するなっ」

 どんな顔してるっていうの……!?そう言うスコールはどうなの?だってだって泊まるって。今まで言われたことのない台詞を、一番言って欲しくて、一番言ってくれそうにないスコールが……

「私…「違うからな!」」

 重なる二人の声。まだ何も言ってないのにぃぃっ!

「やましい気持ちなんてない……今日のリノアの格好だとか、そんなことも関係ない」

 私はただ目を丸くして聞いていたけど、無性に沸き起こる愛しさに声を詰まらせて笑いを堪えた。スコールが一人でどんどん墓穴を掘っている気がして。

 スコールはやましいことがあると口数が多くなるのね……。


「ただ、側にいたいんだ」
「………」
「今日はずっと、一緒に…いたいんだ」


 スコールはどうしてそう……大切な、私が欲しくて堪らない言葉を隠してるの?私とスコールって、本当に遠回りしてると思うな。

 止んだ風が再び流れて、潮騒がざわめき、二人の時間もまた静かに動き始める。私は応える代わりに腕を絡めて、にっこりと笑って見せた。





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バラムガーデン……夜


 日が暮れてもう間もなく10時が過ぎようとしているのに、未だに出掛けた四人の姿はなかった。スコールとリノアがいるはずのSEED寮。扉が開いて現れたのは、資料を小脇に抱えてヤレヤレといった表情をしたキスティスだ。

「指揮官様はさすが、抜け目ないわね……」

 やはりというか、仕事だけは一つの空白もなくきっちり済ませてあり、文句の付けようもない。ただ、部屋はもぬけの殻で静まり返っている。

 キスティスは気付ける程の小さな笑みを口元に携えて、資料を胸元で二度揺らすと、靴音を響かせて、戻るべき場所へと帰っていった。

 キスティスは後で顔を見合わせたサイファに、ぽつりと一言、つまんないわ、と溢していたとか。



 退屈な休日を最高の休日に!





END.

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あきゅろす。
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