[4]
私はバラムが好き。私の大好きな海に囲まれた自然が溢れるこの場所は、いつ足を運んでも癒しと潤いを与えてくれるから。
その上今日はスコールと二人きり。オフでスコールを独り占めに出来るこの幸福感といったらない。私はずっと笑顔だった。
バラムホテルのある方へ進むと、カモメと潮騒が二人を優しく迎えてくれた。何度も意味もなく隣を見上げると、私の視線に気付く度そっと視線を返してくれるスコールにまた笑顔が溢れる。
「本当に嬉しそうな顔をするんだな」
「えへへ。ねぇ、風が気持ちいいね!」
目前に広がるまばゆいばかりの海は、潮騒と共に爽やかな風を送り込んでくる。私の髪が風に拐われて、頬に触れていくのが気持ちよくて瞼を閉じる。
太陽の熱とすぐそばにあるスコールの感触に海の香りは私を心地好くさせてくれる。
「リノア、スカートが……」
「……あっ」
風にスカートが大きく揺れてヒラヒラと捲れ上がるのを、遠慮がちなスコールの手が押さえてくれていた。
「……びっくりさせるな……。だから短すぎるって言ったんだ」
スコールマニアの私が察するに、今のスコールは照れてるんだけど……困った顔をすることでそれを隠してるかな。
「ええ?スコール可愛いって言ってくれたよ?」
「そうも言ったが……。おいリノア、いつまでこうさせてるつもりだ」
私達はバラムホテルの前で立ち止まったまま。けどねぇ、スコール?二人きりになれる場所って一体?私はスコールの手が離れたスカートを押さえて、沈黙する。スコールも沈黙して、結局二人とも歩き出せずに佇んだ。
「リノア」
「うん?」
君は何か言いたそう。ものすごく言いづらそうにして私を見る。そんな風にされると期待しちゃうじゃない?けどスコールのことだから、きっとそんなこと言い出せないんじゃないかと思う。だから。
「スコール、困った顔してるね。何考えてるか当ててあげよっか」
「……なんだ」
「二人きりになれるところって、ここしかないじゃないか。俺は別にやましい気持ちは微塵もないが、可愛いリノアの為なら仕方ないな」
私は難しい表情を作って、スコールの素振りを真似てみた。私を見るスコールの目は……笑ってない。
「それ、俺を真似たのか?」
「似てたでしょ?」
へらっと笑う私。スコールは笑顔の片鱗も見せずに暫く沈黙して、唇を開いた。
「少し違うな。俺はやましいなんて思ってない。ただ……」
「ただ?」
先の言葉を待って、スコールの深い瞳をじっと見つめ、君の髪が柔い風になびいてく。
「いや、なんでもない……」
そして反らされる瞳に応え。私は大袈裟に肩を落とした。
「んもうっ……またスコールの悪い癖!」
君が言いにくいことは、私が聞きたい言葉なのに。言葉を選ぶ必要なんてないのに、スコールの癖は変わらない。
[前へ*][次へ#]
無料HPエムペ!
|