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 私はバラムが好き。私の大好きな海に囲まれた自然が溢れるこの場所は、いつ足を運んでも癒しと潤いを与えてくれるから。

 その上今日はスコールと二人きり。オフでスコールを独り占めに出来るこの幸福感といったらない。私はずっと笑顔だった。

 バラムホテルのある方へ進むと、カモメと潮騒が二人を優しく迎えてくれた。何度も意味もなく隣を見上げると、私の視線に気付く度そっと視線を返してくれるスコールにまた笑顔が溢れる。


「本当に嬉しそうな顔をするんだな」
「えへへ。ねぇ、風が気持ちいいね!」


 目前に広がるまばゆいばかりの海は、潮騒と共に爽やかな風を送り込んでくる。私の髪が風に拐われて、頬に触れていくのが気持ちよくて瞼を閉じる。

 太陽の熱とすぐそばにあるスコールの感触に海の香りは私を心地好くさせてくれる。


「リノア、スカートが……」
「……あっ」


 風にスカートが大きく揺れてヒラヒラと捲れ上がるのを、遠慮がちなスコールの手が押さえてくれていた。

「……びっくりさせるな……。だから短すぎるって言ったんだ」
 スコールマニアの私が察するに、今のスコールは照れてるんだけど……困った顔をすることでそれを隠してるかな。


「ええ?スコール可愛いって言ってくれたよ?」
「そうも言ったが……。おいリノア、いつまでこうさせてるつもりだ」


 私達はバラムホテルの前で立ち止まったまま。けどねぇ、スコール?二人きりになれる場所って一体?私はスコールの手が離れたスカートを押さえて、沈黙する。スコールも沈黙して、結局二人とも歩き出せずに佇んだ。


「リノア」
「うん?」


 君は何か言いたそう。ものすごく言いづらそうにして私を見る。そんな風にされると期待しちゃうじゃない?けどスコールのことだから、きっとそんなこと言い出せないんじゃないかと思う。だから。


「スコール、困った顔してるね。何考えてるか当ててあげよっか」
「……なんだ」
「二人きりになれるところって、ここしかないじゃないか。俺は別にやましい気持ちは微塵もないが、可愛いリノアの為なら仕方ないな」


 私は難しい表情を作って、スコールの素振りを真似てみた。私を見るスコールの目は……笑ってない。


「それ、俺を真似たのか?」
「似てたでしょ?」


へらっと笑う私。スコールは笑顔の片鱗も見せずに暫く沈黙して、唇を開いた。


「少し違うな。俺はやましいなんて思ってない。ただ……」
「ただ?」


 先の言葉を待って、スコールの深い瞳をじっと見つめ、君の髪が柔い風になびいてく。

「いや、なんでもない……」

 そして反らされる瞳に応え。私は大袈裟に肩を落とした。

「んもうっ……またスコールの悪い癖!」

 君が言いにくいことは、私が聞きたい言葉なのに。言葉を選ぶ必要なんてないのに、スコールの癖は変わらない。



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