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[2]シュウによる性活指導
〜思いつきのネタ〜
シュウによる性活指導

サイファーのにおい、その後。






あの昼食の後から明らかにキスティスの様子がぎこちなくなり、シュウが事の転末を聞き出そうとしたが、キスティスは詳しいことは話さなかった。しかし様子がおかしくなる前にサイファーと会っていたことと、紅潮した表情(かお)で「突然だったから驚いてしまっただけ…何でもないわ…」という明らかに何かあったであろう彼女の様子で大体を察したシュウは、これを好機として以下の面々を指導室へと呼び出した。
スコール、リノア、セルフィ、アーヴァイン、ゼル、図書委員の女子、そしてキスティスとサイファーもいる。

シュウは要件を告げることなく「まぁ任務とは別件だから楽にして聞いてちょうだい」と各自に紙コップ入りのミネラルウォーターを手渡していった。

「で?なんで俺まで呼び出しくらってんだ?俺ァSeeDじゃねぇんだぜ」

まるでお前らと何の関係もないだろと言いたげな口ぶりにシュウは指導用の指し棒をサイファーに真っ直ぐ向けた。

「あんた一人だけでも良かったんだよサイファー。けどね、好い機会だから皆にも心得ておいて欲しいことがある。楽にとは言ったが真面目に聞くように」

舌打ちするサイファーをよそに何事だと顔を見合わせたりしているいつもの面々。

「さっさと要件を言いやがれ」とサイファー。それなら、とシュウは言った。

「性活指導だ。」

「生活指導?」とゼルは聞き返す。
「性教育だな」とシュウが単刀直入に言い換えるとどこからかミネラルウォーターを盛大に吹き出した音が聴こえた。何人かが音の発信源を辿るとアーヴァインだった。

サイファーは何を言い出すんだこいつはという顔で室内の隅で壁に背を預けて腕組みのまま靴の爪先を鳴らしている。

「せいきょういくう!?」
「そうだよ。あんたらね、どうしてここに集められたか分からないの?」
「わっかんねぇよ…。スコールやアーヴァインたちはともかく、何で俺と…」
「…………(ビクッ)」

ゼルは隣で微動だにしていない図書委員の彼女を見遣った。高熱でもあるのではと思うほどに赤くなっている。そしてゼルによって引き合いに出された二組の彼らは沈黙のままだった。アーヴァインはやたら喉が渇くのか何度も紙コップに口を付けている。

「サイファー」

シュウはサイファーにじっくりと詰め寄っていく。そして指し棒で触れられる距離まで詰めると、その先端を彼の眉間近くに突き出した。
それを鬱陶しそうに払いのけるサイファーに告げる。

「午後にキスティスと会っていたな。彼女に何をした?」

え、という顔で女子達の視線がサイファーに集まる。

「何も?」とサイファー。

キスティスがバツの悪そうな顔をあげる。

「シュウ、私が大げさに驚きすぎたのよ…。こんな皆を集めて言うようなことじゃないわ…もういいわよ」
「いや、こういうことはきっちり言っておいたほうがいい」
(何やらかしたんだよあいつ……とばっちりか)

何やら言い合う二人を見てサイファーは「ああ」と呟いた。

「あのことか」

事も無げに言う。

「白状しな」とシュウ。

皆がサイファーの言葉を待った。そしてキスティスは大事にしてしまったと溜め息を吐く。

「あいつが寝込みを襲ってきたんでつい勃っちまった。そのことか?」

サイファーがキスティスを顎で指して言い切ると、またどこかでミネラルウォーターを噴出する音が聴こえた。面々はもうその方を見返ることもなく唖然としていたのだったが、発信源はやはりアーヴァインであった。ついでにスコールも噎せていた。ゼルが声を上げて笑う。

「…勃っちまったって!バカだなサイファー!!アハハハハ!!」

各々静まり返るなか一人爆笑するゼル。

「静粛に。」

「・・・・・・」

シュウが一括するとゼルが肩を竦ませて黙りこくった。図書委員の女子は最早心ここにあらずといった状態だった。

「寝込みを襲ったんじゃないわよ。脚色しないで頂戴」
「んじゃ、ありゃナンだ?」
「何でもいいんだよ。問題はあんたが発情して勃ピーしたことだけじゃないんだから」

(頼むから言葉を選べよ……女子の前でやめてくれ……)
スコールは片手で顔を覆って項垂れた。

「んじゃナニが気に食わねえんだ?俺をなんだと思ってやがるんだ」
「あんたは信用ならないんだよ。なんだと思ってやがる?問題児以外の何者であるつもり?」

二人の応酬を通り過ぎて指導室を出ていこうとするスコール、そして彼を黙って追うリノア。それに気づいたシュウが声を張った。

「ちょっと待ちなさい。まだ話は終わってないわよ」
「俺たちは関係ないだろ」
「関係があるから呼び出したんだよ。こっちに戻ってきな、スコール、そして彼女も」

「…………」

しばし立ち止まり、判断をスコールに委ねるリノアと視線を交わすと渋々と戻る二人。

「なんなんだよ……」

シュウは改めて皆の前に腕組をして立つ。斜め後ろにキスティス。

「勃ピーしたぐれえで何カリカリしてんだ。寝起きだったんだ。生理現象をとやかく言われたところでどうにもできねえってのにギャーギャー騒いでよ。処女はこれだから面倒だぜ」

サイファーがこれでもかという程に油を注いだ頃、シュウを制すくらいには余裕を持っていたキスティスの顔色が変わった。

「処女って私のこと言ってるわけ…?」
「じゃなきゃあんな反応しねえだろ。勘違いすんなよ。好きで勃たせてんじゃねーんだこっちは」
「…っ、下品なこと…」
「ハッ。お上品なトゥリープ先生、下品なものをお見せして申し訳ありませんでした、これでいいか?何も分かっちゃいねえくせに教育が必要なのはどっちだかな…。今度はカモフラージュにここに花でも咲かせてやろうか?」

股間を視線で指す。それを想像したセルフィが吹き出した。

スコールは思う。あいつはバカを通り越して天才かと。しかしサイファーの言うことも一理有りどちらかと言えば彼の方に同情した。それは他の男子メンバーも同じ思いだった。これしきのことで度々呼び出されるのではやっていられない。

「ブフッ…フハハハッ…アハハ!!…ッ、ひぃ〜〜〜苦し…たすけ…!!アハハハッ!!アッハハハハハハ!!もぉ勘弁して……ブハッ!!」

セルフィの笑いが止まらなくなる。この笑い声につられてリノアや図書委員の女子までクスクスと笑い始める。

「セ、セフィちょっと…笑いすぎ…」
「だっ、てアービ…ッ…ブッ!!アハハハ!!たすけてアービ笑い止まらへん…!!クックックッ…」

サイファーの苛立つ顔を見てしまいまた笑いに火が付いてしまうセルフィ。その彼女に抱きつかれて、アーヴァインは宥めるように背中を摩った。

「…最近ね、園内でもカップルが目立つのよ」

シュウが切り出す。

「全ての生徒に対して風紀が乱れてるとは言わないけど、こないだなんかある生徒が妊娠騒ぎを起こして上層部で揉めたんだから。結果的には彼女らは子供を産んで育てることを選択してここを去っていったけど」

セルフィが落ち着きを取り戻す。

「あなたたち、ちゃんと避妊してるんでしょうね?交際は認められてるけどそれ以上が懲罰対象であること、認識しているわよね?」
「シュウ!もういいじゃない……こういうことは個人的に…」
「そんな時間ないでしょ?キスティス。個人面談してる時間なんて私たちにはない。まとめて話すわよ」

これを聞かされていた一同は黙っていたが、アーヴァインが口を開く。

「…悪いけど、心配されるような交際はしてないよ。これ以上話す気はないから僕らは戻らせてもらう。セルフィ、行こう。」

「…う、うん…」

そう言ってセルフィの手をとって、皆の視線が集まる中指導室を出て行く。それを見送ってシュウは盛大に溜息を吐いた。

「で、君たちは?」

そして残された者たちに視線を投げかける。

「邪推だな」

スコールが言う。

「余計なお世話だと思うだろうけど、これはシド学園長が危惧していることでもあるからね。軽視しないでね、スコール」

「軽視はしてない」
(信用ないのは俺たちもか)

サイファーはまだしも自分たちにまで疑いの目をかけられていることに少なからず落胆する。しかも事の発端が余りにくだらなくてその落胆ぶりは倍増だ。

「はっきり言って、これは男子に向けての注意喚起だからね。彼女を幸せにするか不幸にするかは君たち次第なんだから。ガーデンに席を置く間は節度のある交際を」

これを言われてスコールは何か違和感を感じる。
愛し合って子供ができることが不幸なのではなく、そのタイミングが問題であるのは理解できるのだったが。ただその違和感を口にすることはなかった。

「言いたいことは理解した。後ろめたいことなんてないが節度のある交際を心がけるようにする。」
「……私も気をつけます」

「OK。心に留めておいてくれればいいから。もう行っていいよ」

「…………」

スコールはリノアに手を差し出し、リノアもその手をとる。
そして指導室を出る間際、サイファーと視線が思い切りぶつかり、
扉が閉まるまで睨み合った。サイファーは半笑いであったが、スコールは全く笑えなかった。やはり、アイツと関わるとろくなことがない。そう思った。


「ゼル・ディンは?理解してくれたか?」

「あのさ…理解もなにも俺たちはさ……」

「俺たちは?なんだ」

「ああ…いや…理解したよ。」

ゼルは、自分たちは何もない、とは言えなかった。チラリと目を向けた先の図書委員の彼女が、ひどく沈んで見えたからだ。

「彼女を……だいじにするよ。」

「分かってくれたらいいんだ。じゃあ行っていいぞ」

「…………」

ゼルが図書委員の彼女を見る。視線がぶつかり、そして彼女の方から視線を逸らされると、ゼルは照れくさそうに彼女の小さな手を握った。
握り返される手。そして、二人も指導室を後にした。





扉が閉まる。

「……さて、相手のいない独りモンの俺はどうすりゃいいかな。誰が手を繋いでくれんだ?ったく、おめでたい連中だな」

シュウがサイファーに近づいていき、大きな図体のその頂きに向かって指し棒を揺らした。

「おめでたいのはあんたの頭だよサイファー。その頭には何が詰まってるわけ?」

サイファーが指し棒を奪い取り、すかさず取り返そうとするシュウの
手の届かない位置まで振り翳す。

「SeeDってのは性指導まですんのか?それがめでたいって言ってるんだ」

「当たり前だ。前例がある以上は。あんたそれでも風紀委員?」

「だから俺が何したって言うんだよ。手も出してねえのに」

「何かあってからじゃ遅いから今のうちに釘刺してんのよ。
いい?よく聞きなよサイファー。もし、キスティスに何かあったら………今度こそ永久にここから追放してやるからね」

シュウが睨み据えるがサイファーは身じろぎもしない。

「お前にそんな権限あんのかよ。で…俺がセンセイに何をするって?」

「…それ、返して」

シュウが掌を見せる。

「言えよ。何をすると思ってんだ?言ったら返してやるぜ」

にやにやと口端を歪めるサイファー。

「………もういい。キスティス、行こう」

「…ええ…」

黙り込んでいたキスティスが言葉だけを返す。そしてやがてサイファーに背を向けると、その背に声がかかる。それはまた彼女の動揺を誘うような、皮肉った言葉だった。

「キスティス。何かされたくなかったらもう俺には近づくなよ」

「…了解。もう二度と昼寝の邪魔はしないわ。私も悪かった。じゃあね、サイファー」

そして扉が閉まる。一人残されたサイファーは舌打ちした。

(なんで俺が重罪人のようになってんだ。…間違っちゃいねえか。)

「・・・面白くねえ」


事実重罪人であったサイファーを信用するものは少ない。今回の件でも、まるでサイファーがキスティスを襲うのが前提とされているかのように話が進められているようで。サイファーはシュウの言葉を反芻した。

”ガーデンに席を置く間は節度のある交際を”・・・

(節度のある交際だ?俺はそんなモンに興味なんかねえんだ)

サイファーは指導室を出る。すると、互いが驚くようなベストタイミングで風神と居合わせた。

「サイファー?探した…」

そう言って近寄る風神に一瞥くれてからさっさと歩きだすサイファー。

「何用?」

ずんずんと歩いて行ってしまう。必死で追う風神。

「待」

と声をかけてサイファーの腕に触れた手を、勢いよく振り払われる。
風神は驚いた。

「触んな!」

とてつもなく機嫌が悪い。いつも機嫌が良いことの方が珍しいサイファーだがそれにしたって格別に。そういう時はこの男の周りの空気が張り詰めており、誰も近づけない。それでも風神は気を取り直して再び追いかける。今度は声をかけることなく、そっと。
ただ、サイファーの大きな背中を見つめ、追いかけた。


「…………」

(嫌なことあったんだね、サイファー)


廊下でカップルの男女とすれ違う。一度は通り過ぎたのに、サイファーは踵を返してそこへ向かっていく。風神はハッとしたが振り返ると同時に怒声が響き渡った。

「ぶっ殺すぞ!!散れ!!」

男女は大慌てで逃げ出す。

「!?」

そして雑魚散らしならぬなんとやらを済ませると風神の元へと戻ってきたが、サイファーの視界には誰も映っていないようで、ただ一人風を切ってズンズン行ってしまう。その荒れ模様に風神はドギマギしながら追いかけるのがやっとだった。

(…何があったか知らないけど…私はサイファーの味方だから
…だからそんなに怒らないで…機嫌直して…)

怒ったサイファーは本当に怖い。これ以上、この男を学園の悪者にしまいと風神も必死なのである。

この後、予定調和のように空気を読まずに現れた雷神がとばっちりを食らうのであった。





勢いに任せて書きすぎて、なんでこんなにサイファーが怒られてるのか管理人も分かりません。とりあえず、細かいことは置いておいて全てサイファーが悪い。



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あきゅろす。
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