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小説
1

GTRの一人である加賀美蘭丸は、今非常に悩んでいた。
本日の仕事を終え、屋上にある自宅に帰ってみれば、先に帰ったはずの天童がソファで寝ていたのだ。
それを見た瞬間、加賀美は声にならない悲鳴を上げた。

――何故だ!何故に天童さんがオレん家に!?

想定外の出来事に加賀美は頭を抱え、オロオロと挙動不審に家中を行ったり来たりを繰り返す。
チラリと天童を見遣れば、はだけた胸が目に飛び込んでくる。それだけでかなりヤバい。目に毒とは、まさにこの事だ。

「ああ――――ッ!!オレはどうしたらいいんだYO!……やっぱ、据え膳食わぬは男の恥……だよな」

心の内を叫んで数拍後、意を決したようにゴクリと音を鳴らして息を飲んだ。そして、ソファに横たわる天童に近づき身を屈めれば顔を落としていく。
段々と縮まる距離に変な汗が浮かんでくる。
天童と付き合い始めて3ヶ月は経つが、実のところ未だ軽いキスしかした事がない。派手な外見とは違い中身は地味男な加賀美にとって、キス一つするのも勇気がいるのだ。

――もう少し。
そう思った瞬間、何かが加賀美の唇に当てられた。天童の柔らかな唇ではない。
不審に思いそっと瞼を上げれば、目の前には優美に微笑む天童の姿。加賀美の唇には、彼の人差し指が当てられていた。

「残念ながら時間切れ、ですよ。加賀美先生」
「て、てて天童さ……先生!?」

再び加賀美の頭が混乱する。天童は確かに寝ていたはず。なのに何故?
加賀美の疑問が見て取れたのか、天童は小さな笑い声を溢した。

「寝たフリですよ。……それにしても、きみはどこまで地味男くんなのでしょうね。私がせっかくお膳立てしてあげたというのに」
「……え?」
「いつまでもウジウジして、いまだ私に触れないきみが悪い。勝手にあがった事は謝罪します。それでは、今日はこれで失礼させていただきますよ」



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