[携帯モード] [URL送信]

小説
1

「チィちゃん、それ似合うよね」

それは文化祭が終わって着替えようとした時。
新撰組隊士の格好をした千聖に、アラタがそう言葉を投げた。思いもよらぬ言葉に、千聖は訝しげに首を傾げる。
そんな彼にアラタはニコニコと楽しげに笑い、自然な手つきで肩を抱いた。

「なんか、今すぐ脱がせて押し倒したい系。みたいな?」
「なっ!?」

そう囁かれた言葉に、千聖は顔を赤く染めて肩を抱く手を払い落とした。
「痛いよ」とわざとらしく痛がる素振りも無視し、千聖は着替えようと羽織に手をかけるも、その手はアラタに掴まれ引き戻される。

「だ・か・ら、脱がせるのはオレの役目だよ」
「ふざけるな!着替えくらい自分で出来る」
「ノンノン、だよ。今はオレとチィちゃんしか居ないんだし、恥ずかしがる事はないさ。ほらほら」
「黙れ、ほげが!」

聞く耳持たぬ状態で羽織に手をかけてきたアラタに、すさかず千聖のハリセンが舞う。
小気味いい音と共に、アラタは床に崩れ落ちた。だが、そう簡単に引く彼ではない。素早く手を回せば、すさかず着物のあわせ目からその手を忍ばせてきた。
もう一度ハリセンを奮おうとするも、アラタの空いている手で制される。こういう時だけは、まったくもって隙がない。

「そろそろ素直になろうよ、チィちゃん」
「誰が――――ッん!?」

抗議しようと顔を向けた瞬間、顎を掴まれ無理矢理に唇を奪われた。
舌を絡められ、それはもう濃厚なキスだ。逃げようと腰を引いても、すぐに手を回され戻される。
頭が痺れる感覚に、軽い目眩を覚える。やっと解放された時には、足元がフラついていた。
互いの唇が離れる時、名残惜しげに銀糸が引き淫靡さを醸し出す。

「ハァ……っ、ハァ……」
「うわぁ、なんかエロい顔。すっげーソソられる」

千聖の頬は上気し、まるで誘われているかのような錯覚を覚える。
息を乱す千聖を壁に押しつけると、あわせ目をはだけさせた。そして露になる乳首に舌を這わせれば、軽く歯を立てる。

「……っ!嶺、やめろ」
「や〜だね。だってチィちゃんの、凄く美味しそうだよ?」
「ァ……くッ」

ここは仮にも学園内。いつ誰が来るともしれない場所だ。
なんとしても声は出すまいと、千聖は唇を噛み耐える。

「唇、そんなに強く噛んじゃダメだよ。傷になるから」
「なら……、こんな所で盛るな!」
「それは出来ない相談……って言いたいところだけど、そうだね。チィちゃんの感じてる声なんて、オレ以外には聞かせたくないし」

千聖の言い分に素直な反応をするアラタ。それが意外だったのか、千聖は言い返す言葉もなく瞳を瞬かせ軽く咳払いをした。

「わ、解ればいいんだ。じゃあ、俺は着替える」

そう言って着替え始める千聖をしり目に、アラタは手を振り楽しげに笑む。
この後、己に降りかかる災厄など知らず、すっかり安心しきった表情の千聖。

「つまりは、学園内じゃなきゃいいんだよね。チィちゃん」

アラタの落とした呟きは、千聖の耳に入る事なく静かに消えていった。








―続く?―



1/1ページ


あきゅろす。
無料HPエムペ!