[携帯モード] [URL送信]

小説
1


己の肌を滑る大きな手。少し筋ばったその手が首筋から鎖骨、胸と辿り落ちていく。
そして、赤く色づく乳首を引っ掻くように爪を立てられた。
それは確かな痛みと共に、甘い快感を呼び起こす。

「っ、ん……」
「ここ、気持ちいいんだ?チィちゃん」

耐えるような喘ぎを上げれば、アラタは待っていたとばかりにニタリと口端を持ち上げた。
唇を千聖の耳元に寄せると、わざと羞恥を与えるような言い方をする。そうすれば、彼は顔を真っ赤に染めて睨んでくるだろう。その顔が、またソソられるのだ。
男のそんな表情を見て興奮する自分は、どこか狂っているのだろうか。――それでもいいと、思っている自分は確かにいる。

「チィちゃんのここ、スゴい事になってるよ?……つまりは乳首だけで、こんなに感じてくれたわけだ。嬉しいねー、ンフッ」
「ち、ちがっ――。ッあ、ひぅ」

千聖自身には一度も触れていないながらも、乳首を執拗に弄ったせいで自身からは先走りが溢れている。
それが恥ずかしかったのだろう。すぐさま否定しようとした千聖だったが、アラタはそれをさせようとしなかった。
先走りを溢す千聖自身に指を絡め強く、優しく、強弱をつけながら扱き始めた。そうすれば漏れる吐息は更に甘さを増し、アラタの理性を崩していく。
逆に千聖は理性を保とうと歯を食いしばってはいるが、あまり効果はなさそうだ。刺激を受ければ反応するのが当然。生理現象なのだから仕方ない。

こういう関係になったのは、聖帝学園に編入して一ヶ月ほど経った時だ。
――何故、俺なのか。
そう問えば、アラタは笑顔で誤魔化す。それ以上聞くのも面倒ゆえ、千聖はそれ以来何も聞くことはなかった。
行為は、ただの遊戯。紡がれる言葉は、ただの戯言。
本来ならば、天十郎に隠れてアラタと身体の関係を持つのは後ろめたい。だが、何故か断る事が出来ないのだ。……きっと、それすら自分は面倒に思っている。それ以外の理由が見つからないのだ。

「ッく、ん……」
「チィちゃん。もう、挿れても大丈夫そうかな?」
「い、……い、から。も……ッ」
「ん、了解だよ」

十分に慣らされた秘部に、アラタの大きく張りつめた自身の先が宛がわれる。何度となく身体を重ねても、これだけは慣れない。

「――ッ、く」

指なんかよりも遥かに大きいモノが押し入ってくる感覚に、思わず息が止まりそうになる。
それでも何故か嬉しくて……。

「……はぁ、全部入ったよ?チィちゃん」
「はっ、ァ……はぁ」


――この感情が解らない。


腰を緩く動かされては、壁を擦られ奥を突かれる強い刺激に涙が溢れる。
普段では決して見れない千聖の表情に、アラタは息を飲み更に自身を膨らませた。

「チィちゃん……、チィちゃん」

そう甘く、焦りを含んで繰り返される己の名。

グチュグチュと卑猥な音が秘部から溢れ、千聖は羞恥に顔を赤く染める。
千聖自身も、大きく張りつめ腹につくほど反り立っていた。今すぐにでも弾けてしまいそうだ。

「あっぁ、……んッ、アァ」
「ねぇ、……ッ一緒にイこうよ、チィちゃん」
「いッ……ァア――――」

千聖の限界に気づいたのか、アラタは額に汗を浮かばせながら腰を更に打ち付け、千聖自身を強く扱きあげた。
そうすれば、千聖は声にならない悲鳴を上げて自身を弾けさせた。それと同時に秘部の強い締め付けを受け、アラタを熱を弾けさせた。
中に弾ける感覚に、千聖は身体を小刻みに震わせる。――熱い。熱くて熱くて、中から溶けてしまいそうだ。
肩で大きな呼吸を繰り返す千聖に覆い被さるようにして、アラタは倒れ込み乱れた息を吐き出す。

「チィちゃん……。ううん、千聖」
「…………?」

普段とは違う真剣な声と己の呼び名に、千聖は訝しげに視線をアラタに向けた。
視線が合う事はなかったが、耳元で囁かれた言葉に千聖は瞳を見開く。

『――好きだよ、千聖。……愛してる』

嘘だと思った。またいつもの戯言だと思った。けれど、彼の様子は普段とは違う。

――ああ、そうか。

ずっと己の中で渦巻いていた疑問が、今綺麗に解けた。
男に抱かれて嬉しいとか、彼からの誘いを断れないとか、全ての謎が解けた。
解ってしまえば至極簡単なこと……。


――そうか、俺も……。






『ああ、俺もだ。……俺もお前が、好きらしい』





―終―


1/1ページ


あきゅろす。
無料HPエムペ!