だよねぇ
「わたし、あの人あんまり好きじゃないの。」
ぽつん。ソファに体を丸めて座ったなまえが小さく呟いた。膝にくっついた唇が尖っている。
あの人、あの人…ああ、あの人。
「あの人って、えっと、ノボリの…?」
「…うん。」
どうやらあの人は、ノボリの彼女で間違いないみたい。なまえはあまり人を選り好みしない性質だから、好きじゃないなんて口にするのはすごく珍しい。僕は視線でもって続きを促した。
「ノボリお兄ちゃんが選んだ人だから、きっと素敵な人なんだと思うけど、…何でかなあ。」
「ふうん。」
だけどはっきり理由はないみたい。益々珍しい。難しい顔をして唸るなまえが面白くて、余計な一言を付け足してみた。
「もしかしてなまえってば、ノボリとられたから妬いてるんじゃないの?」
「えっ?」
ああ面白い!マメパトが豆鉄砲食らったような顔をして、瞳をぱっちり開いたなまえ。いいもの見れた!だけど拗ねたなまえのご機嫌取りはごめんだから、直ぐ訂正しないとね。
「なんて、ね…、……?」
(……あれ?)
僕が二度三度瞬きするうちに、マメパトはいなくなっていた。だけど頬を膨らませたプリンになっていた訳でもない。
ただあの煌めきが、僕のずっと愛して止まなかった輝きが、瞳の中に赤く燃えていた。
(え…っ?)
いなくなったと思ったマメパトが現れる。なまえのその、赤い鳥籠に。なるほどやっぱりこちらも豆鉄砲にぶち当たった顔をしていた。くるっぽー。
「そんなわけないでしょ、クダリくんってば!」
一拍置いて、誤魔化す様に鳥籠が弧を描いた。
だよねぇ
(そりゃそうだよね!)
(…あ、あは。)
(僕、もしかしてやっちゃった?)
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