[携帯モード] [URL送信]
うるさい



「いい加減自分の立場を弁えてくださいまし。」


執務室へと歩く道すがら、何度目かわからない説教を吐き流す。無駄だとわかっていても、部下の手前吐かない訳にはいかない。が、正直飽き飽きしてしまっていて、同じような台詞をただ機械的に吐き出すようになっていた。


「全く、あなたという人は何度注意すれば」

「ねねね、それよりさあ、聞かないの?」


私の言葉を遮り、にんまり。白コートの愚弟――クダリは私を覗きこんでそう問うた。長いコートの裾が擦れ合い、乾いた音を立てる。


「何をです。」

「なまえと何話してたかって!」


何がそんなに楽しいのかクダリはにまにまと私の様子を窺っている。果たして叱られている事を理解しているのだろうか、反省しているのだろうか。答えはわかりきっている、否である。私は大きく溜め息を吐いた。説教を零してもなんの効果も見られないし、胸のモヤモヤとした何かもどうせ零れていかないのだ。諦めるのも仕方が無いだろう。


「なまえね、今日、マルチ挑戦するんだって!」

「…それはそれは、」

「「楽しみですね。」」


弧を描くクダリの目を睨みつける。一層ほっそりと細くなった。ああ、煩わしい。


「うそつき。ほんとはそんなこと、思ってないくせに。」

「………。」


煩わしくて仕方なくとも、何を馬鹿なことを?どうしてそう思うので?と言った投げ掛けは決してしてはいけない。したら最後、もっと煩くなるに決まっている。


「なまえのパートナーが弱かったらいいのにね?」



うるさい
(何を馬鹿な事を、)
(そう吐き捨てた。)




120902


<<>>

あきゅろす。
無料HPエムペ!