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きゅうきゅう



ギアステーション内で、待ち合わせまでの時間潰しにふらふらしていると間の抜けた声に呼び止められた。


「あっれえ、なまえだー。」

「あ、クダリくん!」


振り向くと全身真っ白の彼――クダリくんがいつもの笑顔で手を振っている。立ち止まった私の隣にクダリくんが駆けよった。


「何してるの?」

「何って、もちろんバトルしに来たの!」

「じゃあ今日お休みなんだ。」

「うん。…クダリくんは?休憩?」


私の問いにクダリくんは答えず、ただにんまりと笑んだ。どうやらサボタージュ中だったらしい。クダリくんはここ、ギアステーションでは一応重役のはずなのだけど、こうして仕事を放ってふらふらすることがよくある。よくクビにならないなあと常々思っているが、そういえばクダリくんは昔から要領がよかったからなあと毎回帰結。

こうやって逃亡したクダリくんを捕まえる役目はいつも、古株のクラウドさんか逃亡犯の双子の兄(兼、保護者)であり、仕事のパートナーであるノボリお兄ちゃんだ。彼らには同情せざるを得ない。
待ち合わせ相手からの連絡のため、片手に乗せていたライブキャスターを見せつけるように掲げて見せる。


「ノボリお兄ちゃん呼んじゃうよ?」

「いいよ?どうせそろそろ捕まえに来る。変わらない。」


ちらり、クダリくんは自身の腕時計を確認し、いけしゃあしゃあと言い放つ。見つかる時間が予測できる程サボっているのかクダリくん。わざとらしく溜め息をついてみせると、「それより」、クダリくんが首を傾げる。


「今日、マルチ?」

「うん、そのつもり。…何でわかったの?」

「かっこ。」


今度は私が首を傾げる番だった。短すぎて理解が出来なかったからだ。すると透かさず、けれども今度は少しゆっくり唇を揺らしてくれた。


「かっ、こう。」

「…格、好、?」


ぎくり。今度は私の肩が揺れる番だ。クダリくんの動きを綺麗に繰り返す私の体は、案外器用だ。


「うん。」

「……ふー、ん?」


私は目を逸らす。純真そうなクダリくんの目は、時々人を苦しくする。自分は逃亡の常習犯のくせして、他人には許さないのだ。全部バレているんじゃないかという錯覚を起こす。

いや、落ち着け。クダリくんにバレているはずはない。私はこれを誰にも言った事もないし、悟らせたこともない。だから、大丈夫。

ぶるるるる。マナーモードにしていたライブキャスターが震える。思わず飛び上がってから、相手を確認し、通話ボタンに指を――「あのね、なまえ。」



「そのやり方じゃ、ダメだよ。」



クダリくんのはっきりとした呟きを無視するように通話ボタンを押した。



きゅうきゅう





120208
!)ロリコンノボリさん
じゃありません!!
……(@゚▽゚@)


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