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後悔


マツバさんは、過去の話をよく躱す。

故意になのかどうかは知らない。でも何となく、故意に躱しているんだと思っている。私の知るマツバさんはとても繊細で、距離を置きたがる人だから、躱し方もとても上手い。だからきっと、故意にだと思っている。

特に幼少期の話は、顕著だ。

何故躱すのかは知らないし、そもそも本当に躱しているのかも判明していない。嫌がる原因があるとも思えない。幼少期のマツバさんに問題があったなんて想像もつかないから。

だから、油断していた。きっと気恥ずかしいんだろう位にしか考えてなかった数日前までの自分を、絞め殺してやりたい。やっぱりマツバさんは、私の思う通りの繊細で不可侵な人だった。


『全然本当に普通だったよ。』


そう言ったマツバさんは、どんな顔をしていたんだろう。…少なくとも、どんな笑顔も浮かべていなかったはずだ。だって私が振り返った時、苦笑しようとしていた唇が戦慄いていた。顔色は真っ青だった。瞳孔が開いていた。泣きそうに眉尻を下げていた。……。



私の後悔
(もう二度と)
(あんな顔させたくない)





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