住人
明るさに、目を覚ました。のっそりと起き上がりカーテンを見ると、どうやら寝相で揺れてしまったのだろう、薄く開いている。明るさの原因はこれか。私はそっとそれを直そうとして止めた。そのカーテンは見知らぬものだったからだ。それから直ぐに自分の現状を思い出して自嘲。どうも自分は忘れっぽい。カーテンを完全に取り払い、窓を開けて風を入れる。今日はいい朝だ。朝直ぐにやらなければならない事があるわけではないが、ここでだらけると昼まで寝てしまう。ふと窓の外を見ると綺麗に紅葉した葉が見えた。はらはらと散っている。これは玄関を掃く必要がありそうだ。訪問者は誰もないのだけど。
壊れて動かない時計を、くるり。腕に巻いた。
ざし、ざし。箒が乱暴な音を立てる。まだ少ない落ち葉だけれど、追うのには大変だった。昔もこうやって苦労したっけ。具合のいい日に落ち葉の掃除を手伝ったあの時はもっと下手くそで、箒も私には大き過ぎた。見兼ねて手を貸そうとするお母さんを必死に突っぱねたものだ。懐かしい。それで、やっぱりその時も寝起きで髪がぼさぼさだったから、向こうの道からやってくる彼を見つけて隠れたのを覚えている。それをお母さんにからかわれ───
「!」
視線の先、金糸の髪が、揺れている。あの時と同じように。
(まさか、…ううん、)
彼から目を離せない。けれど近づいてくる彼は気付かないようだ。だって、やっぱり俯いている。その後ろをゴースではなく、ゲンガーがすいすいと泳ぐようについて浮かんでいる。ああ、
(──…彼、だ。)
ざり、ざり。彼の足音が聞こえる。ざし、ざし。慌ててそれを掻き消す。視線を逸らそうとして、出来なかった。
だって、彼が顔を上げたから。
「…あ、」
彼が小さく声を零した。
変わらない、綺麗な目だった。
100821
1ページの短さパねぇ…
最後の方は、長く、なる。はず!
←→