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がらてれ女子



「ねえねえ。」


自分の声が思う以上にがらがらしていることに驚いたけれど、ちゃんと彼には届いたらしい。弾かれるようにして彼がこちらを見上げ、玄関から元の位置まで戻る。私はそれをカーテン越しに確認し、再び声を投げた。


「ねえねえ、それは僕のなんだ。だからこっちに投げておくれ!」


そう言うと彼はきょとんとした顔で首を傾げる。ゴースが大きな声で思い切り笑いだした。私は、ミケを大きく揺らし、彼を急かす。


「…君は、僕の事を知らないの?」


泣きそうに、けれども自嘲するように少し口角を上げて問われたその言葉の意味を、よく考えもせずに返した。


「知ってるよ!」


彼は目を剥いて、息を詰める。それからゆっくり息を吐き、振りかぶった。ぽす、吸引器がベッドに落ちる。


「ありがとう!助かったよ!」

「…、うん。」


がらがらの声で私がそう言うと、彼が小さく笑んだ。どきり。心臓が跳ねる。彼からこちらは見えていないのだろうけれど、かち合ったような視線が恥ずかしい。がらがら声も、恥ずかしい。その上、今更ながら自分の行動も恥ずかしくて仕方なくなり、これ以上は会話出来そうにもなかった。


「…僕はこれからお薬を飲まなければいけないから、また今度僕とお話してね!」

「…、……。」


彼は無理矢理もう一度笑んで、小さく手を振る。私もミケの右手を揺らした。彼の背中が遠ざかっていく。


「また、今度、ね…。」


呟いたその声は彼に届かずに朝の空気に溶けた。





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