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拾い主



嫌な夢を見た。銀色の細い時計で時間を見る。楽しみだったドラマが始まってしまう。

嫌な夢を見た。酷い夕立だからフレンドリィショップで雨宿りをしていたのだが、どうにも暫く止みそうにない。ドラマが始まってしまう。

嫌な夢を見た。僕は強い衝撃のあと、…、……。














(嫌な夢だった。)


そう心の中で吐き捨て、重い足を引き摺るように前に運ぶ。今日も何時も通りだ。嫌な夢だって、かなりの頻度で見るのだから。

ただ、その夢が時折誰かの現実であるということを考えると、胃の中の物が飛び出してしまうことがあるのだが。…まあ、それも何時も通りと言ってもいい程の頻度ではあるのだけど。

そんなことを思いながら歩いていると、頭上でこつりと小さな音がした。それから直ぐ、僕の足元に見慣れないものが転がる。


「…?」


ゴミではないようだから、落とし物だろうか。落ちてきた方を見上げると、一軒の家。窓が開いている。きっとあそこから落ちたに違いない。


「あの…。」


窓の中に聞こえる程度の声で呼び掛けた。しばらく待つも、反応は、無い。どうやら医療器具のようだし、何より無視も出来ないので届けることにする。

軽い足取りを装ってみるけれど、指が震えた。顔を上げて歩いている、それも怖かったけれど、早朝だしゴースも居てくれるのでそうでもない。それよりも扉と一緒に目を見開かれるのが怖い。鬼の子め、なんて言われたらどうしようか。

まだ見ぬ誰かの反応に心臓を掴まれながら、歩く。


「ねえねえ。」


降ってきた言葉が、僕の心臓を跳ねさせた。





100820




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