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ずるい彼女



駄目だ。はっきりとそう思った。


「!ううん、違う、違うの!」


何が違うのか、自分でも分からない。溢れ出る弁解の言葉の意味ももう理解出来ないまま垂れ流すしかなかった。

だって、駄目なんだ。全部全部もう駄目だ。私の事がばれてしまうのも時間の問題だと、痛感。消えなければ、未練がましい思いは断ち切らなければ。

そうでないと本当の本当に、全て終わってしまう。最悪の形に終わってしまう。

流れ出る弁解が止む頃、マツバくんがゆっくり時計を拾った。そして笑う。


「そういえば、今日お寺に呼ばれてたんだった。」


だから、これで。そう言って背を向けようとしたマツバくんを呼び止めた。「待って。」


「…私も、途中までいいかな。」


マツバくんは、もう一度笑う。


「もちろん、いいよ。」





じゃりじゃり、じゃり。舗装されていない道を歩く。お互いどうでもいいような事を口走るけれど、直ぐに沈黙するというのを繰り返していた。

何のためについてきたんだと言われるかもしれないが、この位がちょうどよかった。何故なら、この話を切り出しやすいから。


「マツバくん。」

「?なに?」

「…私ね、ホウエンに帰ろうと思うんだ。」

「え…?」


隣を歩くマツバくんが立ち止まる。


「どうして?」

「…えっと、元々長くいる予定じゃなくて…。」

「……そう…。」


ホウエンに帰るというのは嘘だけど、長くいる予定じゃなかったのは本当だ。だって私は、マツバくんを元気にしにきたのだから。

しかし結局、私は要らなかった。マツバくんを元気にしようとここに来たのに、マツバくんは既に元気で、それどころか心配する部分なんてどこにもない。

そして、実はそんなことわかっていたし予想出来ていた。だからきっと励ましたいなんて建前。私はただ、マツバくんに会いたかっただけだったんだ。今更、本当に、今更。ずっとずっと分かってたのに。会いに来ちゃいけないことも、再会しちゃいけないことも、…好きになっちゃいけないことも全部初めから知っていたのに。


「ねえ、マツバくん。」

「なに?」


だけど、今更そんな後悔は悔し過ぎるから。最後にまたマツバくんに残していこう。あああんな奴もいたっけなんて偶に思い出してくれたらいい。


「私と話して、少しでも楽しかった?」


未練がましいのはこれで最後。だから、許して欲しい。





110414




あきゅろす。
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