(失敗者)
私の黒い体が怖いと、少女が泣き叫んだことがあります。
私の仮面が怖いと、少年がしゃがみこんだことがあります。
私の赤い目が怖いと、大人が震えたことがあります。
けれど、その私の…、私の姿が可愛いと、女性が笑ったことがあります。
黒い体も、仮面も、赤い目も、ゴーストタイプだからと笑った変人です。彼女は私に嬉々としてボールを投げつけました。そして私の収まったボールにこう言ったのです。『私ね、』
『あなたを捜してたの。』
驚きのあまり言葉を失ったのは言うまでもないでしょう。
それから彼女は私を大切に扱ってくれました。一度たりとも離れたことはありません。
ですから、今の今までとてもとても寂しかったのです。
ですから、彼女しか見えなかったのです。
ですから、
「ヨマワル…」
彼女の言っていた例の彼がいることに気付かなかったのです。
みるみる青冷めていく彼女。私も黒い体が白くなっていく思いでした。
さあ彼女は私を上手く誤魔化してくれるだろうか…。
110412
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