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分からない彼女


「ありがとう、ミツルくん!」


差し出したモンスターボールを緑の髪の少年――ミツルくんが優しく受け取った。


「それでどうだった?ゲットできた?」

「もちろん!」


出ておいで、そう言ってボールを翳すと、光と共に飛び出す漆黒のポケモン。先日、お父さんが住むミナモシティに行った際、おくりびやまでゲットしたポケモンだ。彼女を見てミツルくんは驚いて、それから直ぐに笑う。


「なるほど、噂のあの子の影響でしょ。」

「!えっ」

「…ミチルお姉ちゃんから聞いちゃった。」


ミチルさんとは、ここ、シダケタウンに住む女性で、ミツルくんとは親戚関係にある。ミツルくんは体が弱いので、空気の綺麗なここに預けられているのだ。私も父の仕事がホウエンに移ると同時に同じ理由でここに住んでいるので、ミチルさんとは長く仲良くしてもらっていた。たまに三人でお茶をすることだってある。


「も、もう!ミチルさんってば…!」

「ふふ、でも当たりでしょ?」

「…、…まあ…。」


当たりも当たり、大当たりだ。否定なんて出来るはずがなかった。


「それに、帰るんでしょう?ジョウト。」

「うん。」

「逆に何もないのに帰る方が不自然だな、って思ってたよ。」

「ミツルくんって偶に鋭いこと言うよね。」


ミツルくんはそう言うが、不自然さはそれでも拭えないと思う。だって、別に彼と連絡を取り続けていた訳でも約束をした訳でも、ましてや名前さえ告げていないのだから。だから自分で自分の必死さが不思議だったし、不自然だった。


「あっちで就職するってこと?」

「うん、もうコガネで見付けてあるんだ。」

「えっ?早いね!」

「部屋もね。」

「早い!」


ミツルくんは相当驚いたらしく、手に持ったボールを落としそうになっている。


「あれ、部屋ってことは…」

「うん、アパートだよ。」


ミツルくんが首を傾げた。


「おうちあったんじゃなかったけ?」

「ううん、売りに出しちゃったみたい。…ちょっと町外れだから売れたかはわからないけど。それに、一人であの家は広すぎるかも。」

「そっか、一軒家だもんね。」


いつの間にか飛び出していたラルトスが、私のポケモンと遊んでいる。


「いつ行くの?」

「…多分、来月かな?」

「そっか、淋しくなるなあ。」

「ふふ、でも、ミツルくんもでしょ?」


ミツルくんはにっこり笑って、頷いた。


「もう少し良くなったら、名前ちゃんみたいにこの町を出るよ。…ラルトスと一緒にね。」


自分が呼ばれたことに気が付いて、ラルトスが嬉しそうに鳴く。ミツルくんは空のボールを手で転がしながら微笑んだ。


「それで次に会ったら、バトルしよう。」

「もちろん!」


直ぐに私も笑って、強く頷いた。




110403
3ヶ月ぶり…だと…?




あきゅろす。
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