少女
「…、……。」
変わっていた。マツバくんは、変わっていた。当然と言えば当然なんだけれど、彼はもうあの日の幼い彼ではなくなっていた。
優しくて、穏やかで、誰にでも好かれそうだったマツバくん。それは今も変わらない。けれどあの頃は何故か人間不信気味で、私以外に同じ年頃の子とは話していないようだった。そして実は、私はそれが嬉しくて仕方なかった。
汚らしい独占欲だなんて分かっていた。それでも彼という、魅力的な人間と友達でいる唯一の人間が私であること、それに歓喜し、安堵していたのだ。
それが今はどうだろう。ジムリーダーという立場から察するに、彼は町民の支持を得、もはや一人ではない。大切な友人も勿論いるだろう、もしかすると、恋人だっているかもしれない。
じゃあ、彼が元気かどうか見たかった私は、あわよくば励まそうと思っていた私はどうしたらいいのか。私の必要性が見出だせない。
何をするために私はここにきたのだろう。何のために私はここにいるのだろう。
(―――ない。理由が、ない。)
そんな事、わざわざ考えずともわかる。だから、ここで何もなかった様に私が消えてしまえばそれでいいと、わかる。それがきっと一番いい事なのだ。私はここにいてはいけないし、彼に素性を名乗る事も出来ないのだから、初めからなかった事にすることが最善。
そんな事、わざわざ考えずともわかる。
…それでも、出来ない。消える事が、出来ない。きっと彼に対するこの歪んだ執着心からだろう。
私は何も変わっていない。彼はあんなにも変わったというのに、私はあの頃のまま、何も変わっていないのだ。
101112
彼女視点の話って本当無い…
もうここから全部
マツバさん視点にしたい…
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