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目目目目指指指目、目目指指目指目。あちらからこちらから、人から人で無いものから。物心ついた頃から常に僕を突き刺していた。そのうち指や目だけでなく、手が伸びると僕はもう心も体も危ういものになっていた。誰の声が生きた声なのかわからない。だから修行の行き来はひたすら地面を睨んだ。そうしなければ見えないはずの見えるものに、惑わされてしまうのだ。


「鬼の子」


そう僕は呼ばれていたけれど、何の疑問も持たなかった。だって僕は、僕がそういう存在だと言う事を一番知っていたのだ。だから僕はひたすら修行に励んだ、人間になるために。どんなに辛くても構わないから朝から晩まで修行したいとおもっていたけれど、それは叶わず、早朝と夕方早くに帰宅する毎日。鬼に手を引かれないようにとその時間に帰されていたのだが、僕はたった一度、それにだけは口答えをしたことがある。


「もう鬼だよ。」


僕を送り出すイタコさんが悲しく笑ったので、口答えはその一度に留まった。ただし、留まったのは口に出す事だけ。


「鬼に手を引かれますよ。」

「はい。(連れ戻されますよ、の間違いですよ。)」


鬼やら何やらの手招きを無視して地面を睨み、歩く。時折視界の影が揺れる。それも無視。僕の目に映る景色は、いつだって絶望を叩きつける。お前は人間になんてなれない、さあ帰ろう。影が揺れる。帰ろう。



そんな毎日の繰り返しの中、僕の視界を影以外のものが遮った。見慣れないそれを拾ったことから僕の世界は向きを変えた。ぐるり。


「ねえねえ、それは僕のなんだ。だからこっちに投げておくれ!」





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