尽くし系男子
思わず笑ってから、俯く。それを繰り返した僕はなんて愚かで滑稽だったろう。ただただ彼女を離したくない一心だった。僕は彼女が好きで、嘘を繰り返して、甘えて。…もっと違う依存をするべきだった。だって結局彼女は僕の元を去ったのだから。
それは突然だった。「マツバくんは、」
「僕と話して少しでも元気になれた?」
どう答えよう、そう思った。勿論答えは"うん"だ。けれどそう答えていいのか、迷う。だってこれでうんと頷いて彼女が離れたらどうするんだ。―――頷きたくない。そう思ったから俯いた。そうすると慌てた声が降って来た。
「わ、私は、元気になれたよ…!」
震える声がそう言った。一人称を間違えてしまうくらい、慌てたのだろう。僕は冷水を被ったように冷静になる。
彼女を悲しませる、それだけはしたくない。
「あ、えっと僕!僕は元」
「僕も。」
「えっ」
「僕も元気になれたよ。」
顔を上げて笑う。彼女を悲しませたくなかった。僕の杞憂なんて、その大義の前に意味を成さなくていいのだ。だってそうすれば、
「あ、ありがとう…」
ほら、蕩けるような声がちゃんと降ってくるのだから。
どうしようもなく、彼女が好きだ。声が、言葉の表情が、優しさが、もっともっとたくさんの、彼女を形成する全てが好きだ。きっと明日も、僕は彼女が好きだろう。
大きなトラックが彼女の家の前に止まったのはその明日のことだった。
101024
短い…
マツバさん=尽くし系イメージが…
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