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鬼の子



私は小さい頃病気がちで、それはもう長い時間をベッドで過ごした。暇で仕方ないその生活の唯一の救いは、ベッド際の四角い窓だ。桃色のシーツの上から覗く世界は決して景色がいい訳ではなかったし、人通りもほとんどなかった。それでも無いよりは随分よかった。偶に通る人間を観察するのも好きだったし、ポッポのメスの取り合いなんかも面白い。

ある時ふと、毎朝毎晩同じ時間に通る男の子に気が付いた。彼は綺麗な金糸の髪を揺らして疲れた顔を俯かせ、つまらなそうに歩く。彼のポケモンだろうゴースが笑わせようと悪戯をするのだが、彼は取り繕うように笑うだけだった。

彼の事が何となく気になって、お母さんに聞いたことがある。お母さんはこう言った。


「それは、もしかしたら鬼の子かもしれないわ。」


鬼の子?そう質問するより先にお母さんはもう一度口を開く。


「エンジュに鬼の子がいるって、隣のおばさんから聞いたのよ。本当かは知らないけれど、ちゃんと寝ていないと攫われちゃうかもしれないわ。ほら、布団に戻りなさい。」


お母さんは私の背を押して自室に戻るよう促す。私ももうそれ以上の質問はなかったので、それに従って階段に足を向けた。


どうやら鬼の子は、金糸の髪の少年の姿をしているらしい。





昔見た絵本に黄鬼はいなかった。
100813




あきゅろす。
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