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独り占め



自然公園のベンチで並ぶ。最近は少し近い距離に自然と座るようになった。この距離がなんだか心地いい。


「昨日はビックリしました。」

「僕もだよ。」


色んな意味で。その最後の一言は喉に留めておく。すると名前ちゃんは首を振った。


「会ったこともなんですけど、その、スマイルって…」

「僕らしくなかったよね。」


言われる前に言うと、もう一度彼女は首を振る。


「いえ、この前ミナキさんも同じ事言ったんです。」

「…ミナキが?」

「やっぱり友達ですね。」


類は友を呼ぶ。そんな言葉が頭を掠めたが、そんなものは今はどうでもいい。僕より先にミナキが彼女のバイト先を知っていた事と、あのスマイルを貰っていた事に衝撃を受けていたからだ。


「そうかもね…」


しかし僕はとりあえず無難な返事を返し、心を落ち着かせる。別にミナキにちょっかい出されたとか、デートしただとか、そういうことでもないんだし。


「あ、ミナキさんと電話番号交換したんですけど、」

「え?…えーっと、え?」

「え?」


妙な発言が聞こえた。ミナキと名前ちゃんが顔を合わせたのは、僕と一緒にいたあの出会いのときとそのバイト中だけではないのか。


「それは、…えっと、いつの話?」

「えっと…2、3週間前、です。」

「…そう…。」


いや、いいじゃないかとは思う。なんだかんだミナキは僕の彼女に手を出すようなことはしないと思うし、何より彼女の人間関係に口を出しすぎるのも良くない。だが、良い気がしないのも確かだ。頭を悩ませ、自問自答していると名前ちゃんのカバンが震えた。


「あ、」

「あ。」


カバンから覗くポケギアに表示される名前は今まさに話題に上がっていた友人のものだ。名前ちゃんは僕と反対側、つまりそのポケギアに今まさに手を伸ばそうとしている。僕はそれを考えるより早く制止した。


「?マ…、っ」


彼女の手を掴んで止めたのだが、振り返った彼女があまりに僕と顔が近かったので再び思わず、唇を重ねた。離れたらまず何て言おう。とりあえずまずは、


独り占めさせてよ
(今くらいは。)
(…はい。)





「でも多分、マツバさんどこ?
って電話ですよ。」
「…あ、本当だ、着信ある。」
100612
ついでにミナキには
スマイルはあげてません
テレをあげました




あきゅろす。
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