どかーん 「名前ちゃん…?」 「マ、マツバさん…」 平日昼、人が疎らな時間を見計らいコガネ百貨店を訪れた。必要な商品を取り、レジに向かうと見慣れた顔と目が合う。 「いらっしゃいませ!」 ぎこちない笑顔でそう言うと、レジに置かれた商品のバーコードにリーダーを当てる。 「ここでバイトしてたんだ。」 「はい。言ってませんでしたっけ?」 「聞いてないよ。今度は狙って来ようかな。」 「それだけは、その…」 名前ちゃんは全ての商品のバーコードを読み取り終え、レジの下から袋を取り出した。時間にして数秒。せっかく会ったのに勿体ないなあなんて思ったら、性もない悪戯心が芽生える。 「あ、あとさ、」 「はい?」 「スマイル、ひとつ。」 某ファーストフード店だろ、それは。そう思いながら告げてみる。僕の予想では、困った名前ちゃんが見れるだろうと言ったのだが、彼女もどうやら負けっぱなしではないようだ。一度俯いたあと、顔を上げた。 「これでよろしいでしょうか?」 まさかの、誤爆。 (……っ!!) (…マツバさん?) |