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電話



「マツバさんこっちやこっち!」

「あ、アカネちゃん!」


大急ぎでコガネシティに着くと、百貨店の下には既に人だかり。その人だかりの中からアカネちゃんが大きく手を挙げて僕を呼ぶ。人を掻き分け近付くと、アカネちゃんの隣でジュンサーさんが難しい顔をしていた。


「あれ、ハヤトくんは?」

「ああ、ハヤトくんなら…」

「マツバさん!」


アカネちゃんが答えようとした時、人混みを掻き分けてハヤトくんが現れる。


「どうやった?」

「ダメだ。」

「何がだい?」

「屋上が開いてるか確かめにいったんです。あと、窓から中の様子を少し。」


誰も見当たりませんでしたけど。そう言ってハヤトくんが首を振ると、ジュンサーさんが苦い顔をした。


「困りましたね…私達は事件性がはっきりしないと動けないんです。今のところ、犯行声明の類もないですし。」

「あーもう!じゃあええわ!やっぱりうちが中に…!」

「何があるか分からない以上、許可できません。」

「なんでやの!これ以上名前を放っておくんは嫌や!!」

「アカネ、落ち着いて、」

「これが落ち着いていられるかっちゅーねん!!」



「ロケット団だ。」



「は、」


三人の言葉を無視し、目を閉じて百貨店に意識を集中すると、一様に黒服を纏った集団が頭に浮かぶ。


「マ、マツバさん…?」

「どうして、ロケット団だと?」

「これでも、千里眼で通ってるからね。」


目を丸くする三人にそう言って笑う。笑えたのは勿論、


「それに、名前ちゃんは無事だ。」

「ホンマに!?」

「うん。…それより、」


ぐるりと周りの人混みを見回す。ロケット団の企みは分からないが、これからしようとしていることは読めた。


「ジュンサーさんはここのみなさんを非難させてくれませんか。」

「え?」


ぽかん、としていたジュンサーさんは慌てて姿勢を正す。


「ハヤトくんが覗いて誰もいなかったのは、全員一階のスタッフルームにいるからです。人数はそんなに多くありませんが、多分、ここにいる人たちをポケモンで脅かす…もしかしたら傷付けるつもりかもしれません。」

「…わかりました。直ぐに避難させましょう。」


ジュンサーさんが僕の話を信じたかは定かでないが、いつまでもここに大勢人がいるのは何かあった場合危険だと判断したのだろう、敬礼をしてから直ぐに僕らに背を向け行動に移っていった。


「人質は名前ちゃん以外いないみたいだし、二階以上にはあまり人はいないから僕が屋上から入るよ。」

「え!うちもうちも!!前回のラジオ塔の時はジムに閉じ込められっぱなしやったもん!!」

「アカネちゃんとハヤトくんはここでロケット団から他の人を守ってあげて。」

「えー!」

「いいですけど、マツバさんひこうタイプ持ってましたっけ?」

「ああ、今日はフワライドがいるから、大丈夫。」


そう言って自分のベルトに着いたモンスターボールを見せると、ハヤトくんは首を傾げる。


「いつものメンバーじゃないんですね。」

「ああ、ジム戦じゃないからね。再戦用の子達だよ。」


ジム戦に使うのは、ゴース、ゴースト、ゲンガーだ。ジムリーダーの務めは、トレーナー協会に定められたレベルに挑戦者が達しているかを見極めるものであって、叩きのめすためのものではない。勿論、手を抜くという意味合いではないのだけれど。それにそれは全てのジムリーダーに共通して言えることなので、ジム戦用、再戦用と言えば話は通じるのだ。

僕が笑うと、二人は顔を見合わせてから、丸くなった目を僕に向け直す。


「もしかしてマツバさん、怒ってるん?」

「ははは、…当然。」

「……、……。」


アカネちゃんがあまりにも当然の事を聞くものだから、思わず苦笑した。二人も相当憤っているのだから僕の事も聞かずとも分かるだろうというのに。


「…じゃあ名前のことはマツバさんに任せるわ!」

「ありがとう。…でもその前に名前ちゃんの安全を確保しておかなきゃね。」


どうやって?っと首を傾げる二人の前で、名前ちゃんの番号をポケギアに表示させる。


「見張りの男が何だか乱暴そうなんだ。」

「は?それでどうして電話やの?」

「それに、名前のポケギアは電源が…」

「大丈夫。」


戸惑う二人に笑いかける。だって本当に大丈夫なのだから。


電話、してみるよ
(もしかしたら、)
(繋がるかもしれないし)





「…繋がらなくても
繋げるけどね。」
((…え…?))
100717




あきゅろす。
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