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監禁




突然のバトルだけれど落ち着いて戦えば、ひこうタイプのゴルバットなら相性通り勝つことは難しくないはずだ。


「デンリュウ!でんげきは!」

「いけ!ヌオー!」

「二匹!?」


命中率の高いでんげきはだがゴルバットを庇うようにヌオーが割り込んだため、電撃はヌオーが代わりに浴びることになった。勿論、じめんタイプに電気技は効かない。


「あなた達、それでもトレーナーですか!?」


信じられなかった。私の周りには、こんな卑怯な手段を使って勝とうとするトレーナーはいない。だって、その時点でそれはポケモンバトルではないのだ。ここにきて、怖くなる。相手はロケット団、悪の秘密結社なのだ。いくら解散したと聞いていても、ほんの三、四年前にポケモンや人間に危害をくわえた話を聞いた事くらいはある。


「そっちがその気なら…っ!タッグバトルです!お願い、ゲンガー!!」

「グゲゲゲゲッ!!」


タッグバトルは慣れないけれど、マツバさんと何度かした事があるし、37番道路の双子ちゃんやお姉さん達とも経験がある。ゲンガーは瞬時に現状を察知したようで、相変わらずのにんまり顔のまま周囲のロケット団員を睨み付けた。


「俺達はトレーナーじゃねぇ、ロケット団だ!いけ!ガーディ!!」

「…っムクバード!」


慌ててムクバードを出したものの、ここまで来るとさすがに圧倒的に不利だ。三匹に三人のトレーナーが指示するのと一人が指示するのでは機動力が違いすぎる。背筋が凍った。しかし、躊躇えば本当に負けてしまうだけだ。


「ゲンガー、ヌオーにさいみんじゅつ!決まらなくてもそのままヘドロばくだん!ムクバードは、」

「ムクバードにひのこ!」

「がうっ」

「よけてっ!」


やはり指示は追いつかない。ムクバードは慌てて避ける事が出来たものの、私の指示を振り向いて仰ぐ。手持ちとして一番新しいし、性格もおっとりだ、無理もない。このまま逃げることも可能だけれど、どうやら恐怖で腰を抜かしているらしいイーダさん(彼はロケット団全盛期時代、カントーに住んでいた人。)を置いていくわけにはいかない。


(マツバさん…っ)


思わず、優しい彼の姿が脳裏を過ぎる。こんな時、マツバさんならどうするだろう?


「ゲンガーあやしいひかり!」

「キィィィ!?」

「今よ、デンリュウ10まんボルト!!」


バリバリと大きな音を立ててゴルバットが地に落ちる。


「ちっ!戻れ、ゴルバット!」

「ヌオー!デンリュウにマッドショット!!」

「デンリュウ、まもる!!ムクバード、後ろからつばさでうつ!!ゲンガー、ガーディにシャドーボール!」


いける、そう思った。他の団員も慌ててボールに手を伸ばす。新手があるならなおさらどんどん片付けていかなければ。マツバさんならきっとこんなときも冷静に対処するはず。そう思うと不思議と私も冷静になれた。しかし、その冷静な頭が何故か警鐘を鳴らす。ガーディのトレーナーの口角が一度上がったからだ。


「ガーディ!かわしてでんこうせっか!!」


"でんこうせっか?"ゴーストタイプにノーマルタイプは効かない、そんなのは初歩中の初歩のはず。ガーディは指示通り私のゲンガーのシャドーボールをなんとか避ける。

――私は、ロケット団を知らなかった。ロケット団が大きく活動していたのはカントー地方で、陸続きになっているジョウト地方では実はロケット団の被害件数というものが恐ろしい数ではなかったし、姿を見ることも稀だったらしい。だからここ最近の復活騒動以前では本当にジョウト地方は噂だけが闊歩していたのだ。

だから、私は本当のロケット団を知らない。

ゲンガーに当たらないだろうでんこうせっかのあとの指示をゲンガーに出そうとした。が、


「ゲンガー、…っ?」


ガーディは、シャドーボールだけでなく、ゲンガーも"かわした"。声を上げる間もなく、小さな体が私に飛び込んでくる。


「ゲンガッ!!」

「……ッ!!!!」


受け止めた大きな衝撃に声も出せない。飛び込んできたガーディごと、壁に打ち付けられた。


「……っ、………ッ!」


自分がポケモンだったらバトルの度にこの衝撃を味わわなければならないのかと思うと、ゲンガー達になんだか申し訳なくなる。そのゲンガー達は私を見おろし、唖然としていた。当然だ、今まで私達がしてきたバトルの中で、トレーナーが傷付けられたりトレーナーを傷付けたりしたことはないのだから。しかし、唖然としたのはほんの一瞬で、彼らは慌てて私に駆けよってくる。


「動くな!!」

「!!」


びたり、三匹の動きが止まった。私の首には、鋭いガーディの牙。


「動いたら、ご主人さまの命はねーぞ、ははは!」

「大人しくボールに戻んな。」


ぎろりと擬音が聞こえそうな程に倒れる私の横に立つ男を睨む三匹の前に、ごろりと彼らの入っていたボールが転がされる。三匹は各々悔しそうな態度で周りをきょろきょろと見回し、打開策が無い事を悟ると大人しくボールに戻っていった。


「いいポケモンだな。あとで使ってやる。」

「!やめ、て!返、て!!」

「やーだね、あははは!!」


三匹のボールを拾い上げた男がくるくるとボールでお手玉をしながら部屋を出て行く。伸ばした手は届くはずもない。悔しい、悔しすぎて涙が滲む。出ない声にももどかしさが募る。


「そこのお前、その男を他の連中のとこに連れてけ。」

「人質は…?」

「その生意気で反抗的な女にする。」


団員の中で一番偉そうな男が私を顎で指した。悔しいので、めいいっぱい睨み付ける。そうすると男は何が楽しいのか、喉をならしてくつくつと嗤う。


「!ちょ、そんな…」

「いいからさっさと来い。」

「名前ちゃんはただのバイトです!」

「うるせぇな、そんなのどーでもいーんだよ。」


イーダさんは団員二人に引きずられ部屋から出された。もうこのコガネ百貨店に、私の味方はいない。部屋を囲む黒服の男たちのせいか喉が押しつぶされるように呼吸がしずらくなる。


「さあて、」


偉そうな男が嗤う。


監禁されて
もらいましょーか

(嫌、嫌だ、)
(マツバさん…っ)





10
マジでですね、腹に強く物が当たると
本当に声出ませんよ!
すいませんとか
だいじょうぶですとか、
言いたくても声がでません^^
そして前ページとの温度差w




あきゅろす。
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