バトル
「ななな何ですかあなた達は!?まさかロケット団!?」
「そのとーりっ!」
「泣く子も黙るロケット団様だぜ!」
「馬鹿な…!ロケット団は解散「してねーよばーか!」
「うっ!?」
思いきり腹を蹴りあげると男は呻いて蹲った。百貨店の社員らしい人間はこの男を残し全員地下通路の一室に放りこんだ。男はトレーナーでもないし、見張りがいるので邪魔も入らない。さあどんな悪いことをしてやろうか!
「そうだ、コガネ百貨店の食品全部食い尽くしてやろうぜ!」
「ばかか!もっと悪いことじゃねーと意味ねーだろ!」
俺たちは世の中の誰もが恐怖に震えるようなことをする必要がある。何故なら、ラジオ塔の乗っ取りが、ああロケット団とか何とか言ってたねぇとその程度の噂で終わっていたからである。ヤマブキのシルフカンパニー事件でさえ今なお語られ続けていると言うのにだ!
部下の一人を睨むと、そいつは慌てて口を開いた。
「じゃ、じゃあコガネ百貨店爆破とか…!」
「おお!って俺たち中にいるだろうが!」
「すっ、すいません!」
怖いくらいの大惨事だと思ったが、実際自分達にとって大惨事だ。ここに爆弾を仕掛け、逃げると言うのも手ではあるが、逃げてしまうと犯人がロケット団だと言えなくなるかもしれないし、各地でロケット団に対する警戒心も強まってしまう。今ちょうど薄れているのだからその内に…
そうだ、
「シルフカンパニーを中心にヤマブキを全封鎖したことがあるらしいな。」
カントーに残されたメンバーは殆どがサカキ様が行方を眩ませたあとに入った人間なので、らしい、と曖昧に言っておく。すると団員達は大きく頷いた。
「ロケット団の力を示すには、栄光あったあの頃を再現すればいい。」
あの頃と今ではロケット団への警戒心が全く異なる。その上、コガネはラジオ塔の件で完全にロケット団は解散したものだと思っている。だからそれを利用すれば、今の少ない力でもあの頃と同じ様な事件を起こすことができるはず。そうすれば民衆はロケット団が衰退していようと、我々をそれ以上に大きな存在として認識するに決まっているし、そしてそれこそが俺達の目的だ。
「コガネ百貨店を拠点に、コガネを制圧する!」
「お、おおぉぉ!!」
「やってやろうぜ!」
「俺たちの手で!!!」
ガチャ、
「……」
「……」
「こんにち、は?」
「…………」
団員達は水を打ったように静かになる。突然扉を開けてスタッフルームに入ってきたのは見慣れない女だ。女はこちらを見て目を瞬かせている。
「イーダさん!」
床に踞ったままの男に気付くと、女は慌てて駆け寄った。
「おい誰だ見張りぃぃ!」
「すっ、すいません!」
「なんでここにいるんだ!」
「すっ、すいません!」
びくつく部下に大きく舌打ちした。カントーに残された組は大きな活動に参加したことがないメンバーが多いため、トラプルも多いだろうと予想はしていたが見張りを投げ出すとはどういうことだ。
「鍵は!?」
「開いてましたけど…」
「見張りぃぃ!!」
「すっ、すいません!」
施錠の確認を口にすると、部下ではなく女が申し訳なさそうに言った。いよいよ見張りの男はガタガタと震えだす。
「ちっ、おいそこのお前達3人!見張りにいけ!!」
「はっ!」
3人は多いかと思うが、またトラプルが増えるのは避けたい。早速上手くいかない団員達に思わず溜め息をついた。
「あなた達…ロケット団?」
「そうだ!」
「…他の人は?」
「さあな!」
女はこちらを睨み付けながら、踞った男を後ろに立ち上がる。手にはモンスターボール。丁度いい、先程捕えた社員の中にはトレーナーがいなかったのでつまらなかったのだ。
「面白い、やる気か!」
「勿論…!」
「大人しく捕まればいいものを!いけっゴルバット!」
「お願い!デンリュウ!」
バトル開始!
(正攻法なんて)
(使ってやらないぞ)
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