[携帯モード] [URL送信]
ショート




待ち合わせ場所に向かう足取りは重い。誰との待ち合わせかって、そりゃあ彼氏、である。入学当初はまさかこんなことになるとは夢にも思っていなかった。

その入学した高校とはそれなりに偏差値が高くて進学率が良くて、その上徒歩で行ける高校で、ともなれば物臭な私が食い付かないはずはなかった。勿論、それなりに名がしれた進学校で駅から近いとなれば多少家の遠い子でも食い付くわけで、全校を見ても徒歩で帰る子は少ない。それが救いだった。ダイゴ先輩との約束は、帰りは必ず一緒に帰ること、それだけだがそのそれだけだがどれ程全校生徒に衝撃を与えるかは火を見るより明らか。先輩はその火を見てみたいという好奇心からきっと私と付き合うなどと言いだしたのだ。ツワブキダイゴ、腹黒い男である。しかしそうは問屋が卸さない。その例の彼はその数少ない徒歩組なので待ち合わせさえ見られなければお付き合いがバレる機会はぐっと減るのだ。待ち合わせに指定した場所は一年生と二年生の昇降口の間。人通りはあるものの、下駄箱や校門で待たれるよりはずっといい。


「んじゃまた明日ね!」

「明日なあー」

「うん、ばいばーい。」


昇降口から出て、ナタネとアカネと別れる。私も部活に入っていれば、この帰りの約束は作られなかったかもしれないと思うと入っておけばよかったなと思う。


「はあ。」


しかし今さらとやかく"たられば"を羨もうと現状は変わらない。地を這わせていた視界にローファーが映り込んだ。きっとダイゴ先輩だ。顔を上げる。


「こんにちは。」

「なっ、な!?」

「名前ちゃん、だよね。」

「は、はい!」


顔を上げると、そこにいたのは憎たらしい爽やかな笑みではなく、柔らかな笑みを浮かべるミクリ先輩。かあっと自分の顔が熱くなるのが分かった。とにかく昨日のことをまずは謝らなければ!


「昨日はすいません!」

「ああ、大丈夫だよ。ダイゴと会ってしまったんだろう?」

「え。あ、…はい!」

「ビックリしただろうけど、むやみやたらに"飲む"訳じゃないから安心して。」

「…え?」


ミクリ先輩の言う言葉に頭が白くなる。飲む、の目的語は何だ。ミクリさんは綺麗に微笑んだまま言葉を続ける。


「ダイゴに酷い事されたら直ぐ私に言うんだよ。」

「酷い事って、そんな事しないよ。」


ミクリ先輩に気を取られ、今さらその後ろで嗤うダイゴ先輩に気が付く。ダイゴ先輩はそのまま私の前まで来て、屈み、私の耳に言葉を滑らせた。


「君のだあい好きなミクリ先輩も吸血鬼だって言ったら、どうする?」


思考回路は
ショートしました。

(勝手に巻き添えにしないでくれ。)
(あ、聞こえた?)





「嘘だ…!」
100610
生徒会長とは違う方向で
子供っぽいダイゴさんを
書きたい…はず。




第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!