[携帯モード] [URL送信]
こたえ




「名前、コンビニ行かない?お腹すいちゃってさあ。」

「うん、いいよ。」

「うちもうちも!」


文化祭準備が始まってから今日まで、私達は放課後コンビニに行ってご飯を買って、学校に戻り遅くまで制作をするようになっていた。今日は最後の追い込みだからほとんどの生徒がそうだろう。私達のクラスも、少し時間をずらして休憩がてら順番にコンビニに行っている。


「ダイゴ先輩心配やなあ。」

「…うん。」


―――あの後、ダイゴ先輩は糸が切れたように崩れた。ミクリ先輩が言うには、恐らく空腹からくる貧血じゃないかということだったが、何故あの先輩が空腹なのか。…多分吸血衝動とやらに起因しているんだろうけれど、どうして今更それによる不調が現れるのだろう。今までだってあの体質と付き合ってきたのではないのか。


「私とすれ違った時もなんかふらふらしてたかも…。まあ大事なくてよかったよね。」

「そうだね。」


だけど、先輩に文句を言うよりも、今回に関しては自分を責めなくてはならない。

今まで散々先輩を異常だと言ってきたが、きっと、私の方がよっぽど異常だ。だって私はあの時、動けなかったんじゃない、動かなかったのだから。私は多分、先輩の牙を受け入れるつもりでいた。いや、むしろ


(受 け 入 れ た か っ た ?)


あの牙は、私以外の人間に何度も立てられたのだろう。あの喉は、私以外の人間の血を幾度も通してきたのだろう。それについて私は、嫉妬にも似た感情を抱いている。これを異常と言わずして何と言うのか。きっと先輩の牙があの時私の肌を破ったのなら、あの薄い水色を、掴んで、引き留めただろう。何が、献血レベルなら、だ。その程度じゃ、手を放さないくせに。

私は、すごく、ダイゴ先輩が好きだ。もういっそ、病的に。あの牙を引き抜いて、血液ビンを叩き割って、私の脈打つ左手首を、薄い唇に押しつけて。私だけの、吸血鬼にしてしまいたい位に。付き合ってるなんて上辺だけだったのに、私はあっさりあの吸血鬼に、ダイゴ先輩に溺れてしまった。先輩にとって私は、偶々正体を知られてしまった女生徒Aなのに。


「やっぱり心配なんだ?」

「…っへ?」


私を覗きこみ、からかうような笑みを浮かべるナタネに、心臓が跳ねた。ごめん、今、全く心配とかしてませんでした。


「しゃあないなあ、後で顔見に行き。」

「ええ、でも、」

「行ってきなって、パンかおにぎりかもってさ。私達がみんなには言っとくし。」

「や、もう放課後だし…保健室にもいないんじゃないかなあ。」

「そんなん見てみなわからんやん。」

「そうそう。さすがに1時間とかはこっちも困るから、2、30分位は様子見に行ってみなよ。」


そんなまるで彼女みたいなこと、出来る訳ないじゃないか。そう心で吐き捨てる。いつだって、ダイゴ先輩の方だった。付き合おうと提案したのも、一緒に帰ろうと言ったのも、勉強しようと言ったのも、メールを送ってきたのも、全部。主導権は常に先輩にあった。きっとこの関係を終わらせるのもそうだろう。なんだかんだ優しいあの人は、私の気持ちが向いているのが分かったら、そっと距離を置いて、優しく切り捨てる。それを早めるだろうことを、態々したくはない。

そんなの、とっくの昔にわかってた。この気持ちに気付いた時から、わかっていたのに。どうやらここにきて今更上手く飲み込めない。


(ねぇ、)だってこんなにも、

(こわい?)あの問いかけが頭に響いている。


「…うん、ありがとう。そうしてみる。」


きっとこれに答えてしまったら、私の気持ちはバレてしまう。それでも、答えたくて仕方ない。

だから、あの答えを言いに行こう。




こたえ
(「 僕 が 、 怖 い ? 」)
(そう聞かれたあの時とは、違う答え)





140817
夢主もなんか病んでる…?注意追加しよ
あとダイゴさんの頭って何色っていうの
あと相変わらずコガネ弁迷子




第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!