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無視した




「あ、マツバさん!」

「あ、ナマエちゃん。」


ばったり、曲がり門でナマエちゃんと鉢合わせた。2日振りのナマエちゃんは前回と同じ様にムックルを肩に乗せて僕を見上げている。瞬間、違和感。


「髪切った?」

「あ、はい、少し。」

「パーマ?」

「はい。」


さらさらだったナマエちゃんの髪は以前より高い位置でゆるゆると揺れていて、時折胸元で跳ねる。…少し、勿体ない。ああそうか、実は風になびくときに香るシャンプーが好きだったんだ、と今さら知った。(決して疾しい意味は、無い。)それにしても本当に、勿体ない、な。


「まっ、前の方がよかったですよね!ちょっとパーマとか、調子乗っちゃって!」

「え、」


くだらないことを考えていると、ナマエちゃんが弾かれたように声を上げる。


「貯金が貯まってたから嬉しくなって…!」


真っ赤になって必死に言葉を並べるナマエちゃんに申し訳ない気持ちになった。僕が無言だったために不安になってしまったのだろう。


「似合ってるよ、大丈夫。」

「あ、え、…あり、がとうございます…」


とりあえず微笑んで誤魔化して、話を反らそう。いつまでも曲がり門にいるわけにもいかないのでそれとなく道の端に移動する。


「で、ナマエちゃんはどうしてここに?あ、バイトこれから?」


ここ、と言うのは自然公園だ。早朝と言うには随分日が昇ってしまったが、普段僕らが会う時間よりはうんと早い。


「いえ、今日はお休みで…ただの散歩ですよ。マツバさんは?」

「僕もだよ。何となくそんな気分になったから。」


朝は苦手なんだけどね、そう笑うと、ナマエちゃんはゴーストタイプだからですか?と可笑しそうに笑った。あ、そうだ。


「今暇?」

「?はい。」

「じゃあ、バトルしよう。」

「えっ、」

「嫌?」

「むしろしたいですけど、随分急ですね。」

「ずっとしたいと思っていたけど、ほら、会う時間がいつもは遅いからね。」


ナマエちゃんは頷くと僕から離れる。自然公園だし、ここでバトルしても問題無いだろう。ただ通行の邪魔になると行けないので、広い場所に移動しようとするナマエちゃんを追う。


「この辺にします?」


ナマエちゃんは楽しそうな笑顔で振り向いた。あんまり素早く振り向くものだからムックルが少しつんのめる。彼女はそれに気付かないのか、未だにこにこと僕を見上げている。


「そうだね。…バトル、好き?」

「はい!」


僕から距離を置こうとしたナマエちゃんにそう問うと、更に嬉しそうに頬を緩ませた。僕の方もやっぱりつられて、すっかり頬が緩みきる。


「じゃあ毎週バトルの日、作っちゃおうか。」

「!」


ぱっちり。ナマエちゃんの目が見開く。…可愛い。


「そうだな、じゃあ火曜日。ナマエちゃんがバイトの日はいいよ。」

「あの、私は、嬉しいんですが…マツバさん忙しくないです、か?」

「バトルも修行の内だから、いいんだよ。」


そう言うとナマエちゃんは再び嬉しそうに目を細めた。


「バイト、なるべくいれません…!」

「ふふ、ありがとう。」


お互いくすくす笑っていると、ムックルが不機嫌そうに頭を振る。それに合わせてナマエちゃんの髪が揺れた。自然と僕の指はその髪に伸びて、軽く引っぱる。指を離すと、ぴょこりと元の位置に戻った。それからゆるゆると揺れる。


「これ、すごく似合うよ。…可愛い。」

「!…あ、りがとうございます。」


勿体ない、なんて思ったその髪は、もう不思議とそんな風には思わなかった。シャンプーの香りは振りまかないかもしれないけれど、柔らかそうな髪は触ったらやっぱり柔らかくて、ナマエちゃんによく似合っている。


「バトルが終わったら、お昼食べて帰ろう。」


そう言うとナマエちゃんは赤い顔を更に紅潮させて、いよいよ不機嫌さがピークに達したらしいムックルがばさばさと翼をはためかせた。仕方ないので慌てて僕はバトルのために彼女から離れる。そしてバトルのために、


朝から震える
ポケギアを無視した

(だってこんな時間に、)
(非常識だ。)





(かけてくる人物に予想もつくし。)
100523
ネタに困ってパーマになった
そして電話はきっと某スイクン厨




あきゅろす。
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