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好き




ベッドに飛び込んだ。化粧が移るなんて、今はどうでもいい。

背中を擦る手はきっとゲンガーだ。何だかんだ言って、やっぱり優しい。がたがた聞こえる音はきっとモンスターボール。出ようか迷っているんだろう、優しい子たちだ。

だけどこれは自業自得。ただし、罰ゲームにマツバさんを使ったことがじゃない。あのとき、ちゃんと否定出来なかったことがだ。

マツバさんが私を好きじゃなく付き合ったのは知っていた。"昨日の"と私を呼ぼうとした日も、ポケギアの赤外線機能に安心したのも、正直に真実を告げようか迷っていたことも、知っていた。全部じゃないけれど挙げたら切りがないほどのことは、知っていたんだ。

だけど分からない。マツバさんは初めから優しかったけれど、最近はもっと優しくて、昨日なんか私に言いたくもないだろう話を聞かせてくれた。たくさんじゃないけれど、確かにマツバさんは私に心を許すときがあったのだ。どうしてか分からない。…なんて、本当はそれも答えを知っている。彼もやっぱり人間なのだ。私の告白を受け入れてしまったように、気紛れな行動を取ることだってその場の空気に流されることだってきっとある。なのに私は何処かで期待していた。マツバさんも、私を好きになってくれるんじゃないか。そんなこと、あるはずないのにね。


「……ッ、」


"僕は君を好きで付き合った訳じゃない。"

思った以上に、言われるのはきつかった。泣いてしまいそうだったけれど、泣いてしまえばきっとマツバさんは困ってしまっただろう。果たして私が泣いたところで、マツバさんが振り返ったかはわからないが。それに、泣く泣かないより先に、否定しなかったことに後悔している。あのとき、あの子が私に罰ゲームだと言ったときにちゃんと言えばよかったんだ。そうだけどそうじゃない、と。

あの日、コガネジムでみんなでやった罰ゲームありのポケモンバトル。トーナメント制で、負けたら罰ゲームボックスからくじを引くというものだった。私は最後の最後でアカネちゃんに負け、そのボックスからくじを引くはめになった。私が引いたくじは、"マツバさんに告白する"ではなく、


"好きな人に告白する"だった。


だから、相手がマツバさんだっただけ。


(…それだけ、なんです。)


だからマツバさんを


好きなのは本当です。
なんて、今更。

(遅すぎるんだ、いつだって。)
(後悔は先にたたないのね)


100601
罰ゲームの詳しい話は
いつか書こうか、な。




あきゅろす。
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