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問い詰めたい




ナマエちゃんを好き。自覚してしまえば本当になんてことはない。いつから好きだったのかはわからないけれど、多分きっと随分前だ。随時前と言っても、跨いだ季節は一つだけ。恋に落ちるのには短いのか、それとも長いのか。僕にとっては十分な時間だったので、論議に意味はないが。

昨日の今日なのに、ナマエちゃんと会いたくて仕方がない。白い息を零しながらいつもの道を進む。

ナマエちゃんは、僕が好きで付き合ったのではないことを知っている、と思う。いや、確実に知っている。だから彼女は僕と距離を置いているのだ。ふとした瞬間に感じるその距離を詰めてしまいたい。そして、僕もナマエちゃんが好きだと、伝えたい。それに触れたいし抱き締めたいし、笑って欲しいし、それから、…

あまりに多過ぎる欲望に自嘲する。いざ自覚してみたらこんなにもあふれ出したこの欲望達は、一体今の今まで何処に隠れていたんだろう?

すっかり落ち葉の無くなった道から、視線を前方にやる。遠目でも分かる、ナマエちゃんだ。妙に嬉しくなって歩を速く速く進める。

今日はお団子か、可愛いな。ちゃんとこの気持ちを伝えられるだろうか。あれ、誰か隣にいる。

くるくると巡る思考に、もう一度自嘲したところで、ゲンガーが横から現れた。


「ゲンガッ」

「?ゲンガー?」


ゲンガーが僕の事を軽く敵視しているのは知っているが、今までナマエちゃんに近付くのを邪魔したことはない。そのゲンガーが今、恐らく敵意ではない感情で僕の邪魔をしようとしていた。明らかに様子がおかしい。もう一度ゲンガーに声を掛けようとしたとき、はっきりとナマエちゃんとは違う声を聞いた。


「あなたが、マツバさんを好きじゃないの、知ってるんだから!」


何を言っているのかよく分からない。ゲンガーが僕の顔の前で僕の両耳を塞いだけれど、もう遅い。一度認識してしまった声は多少聞こえにくくても拾えてしまう。


「好きじゃないのに、告白したこと知ってるんだから!」


嘘か本当かなんてわからなかったけれど、頭が真っ白になった。


とりあえず、
問い詰めたい

(だけど"どうして?"その言葉は)
(詰まって溢れることは無かった)






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あきゅろす。
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