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想う



金色の光を帯びて絵でしかみたことのない、僕の求めて止まないポケモンが、スズのとうを一度旋回して、舞い降りた。

僕がそれを見たのはとうの上ではなく、下。求めて求めて、求めて止まなかったのに、僕は結局並ぶことは出来なかったのだ。幼い日も今も、やっぱり見上げる事しか出来ないのだ。見上げて、見上げて、前を見なかったことがいけなかったのか?それは分からないけれど、今前を向けば選ばれなかった現実という壁が目前にあって、僕の鼻っ柱を折らんばかりに近い。近すぎて右と左、どちらに避けられる道があるのかも見えない。

さあ、下らないことを考えている場合じゃない。これからのことを考えなくては。だって僕の夢は昨日、一人の少年のボールにおさまってしまったのだから。目を逸らしていた、"選ばれなかったときのこと"をこれから作りださなければ。

ざり、ジムに足音が響く。漸く僕以外の人間が入ってきたらしい。そちらに目を向けると、ジムトレーナー。


「ヨネコさん、」

「マツバさん、いらっしゃったのですか。」

「?今日は休みじゃないですよね?」


まるでいるはずのない人間を見たような反応だったので、不思議に思って問う。今日は休みではない。普通に、いつも通り、日常のまま。変わったことと言えば、少し早くジムを開けたこと位だ。首を傾げると、彼女は苦笑した。


「今日はおやすみしませんか。」

「…どうして?」


暗闇でよく見えなくとも、彼女の笑顔が少し凍ったのが分かった。気を使ってくれたのに、素っ気ないもの言いだと自覚はある。けれどとにかくすっきりしたくて、誰でもいいから挑戦者が欲しかったのだ。


「いいえ、何でもないです。」

「そう。」


ざり、優しく笑んだ彼女はゆっくり持ち場につきに行く。その背中を眺めながら、彼女が、そして他のジムトレーナーが負けることを願うなんて、ジムリーダーとしてとても罰当たりだ。


「…はあ。」


そんな自分に溜め息が漏れた。情けなさすぎる。その上何故か、情けなくないですよ、なんて優しく微笑むナマエちゃんを脳裏に描いたりして、情けなさは更に増す。そういえば、とポケギアを見る。記憶通り今日は火曜日、ナマエちゃんと会う日だ。こんな情けない心情のまま誰かに会うだなんて、そう思うけれど約束は約束だし、彼女と会うこと自体は嫌じゃない。むしろ、…。

そう考えて頭をぐしゃりと掻き乱した。だってこの手の平の下の脳みそが、ナマエちゃんの名前ばかり呼んで、うるさい。ナマエちゃんの笑顔ばかり思い出して、うるさい。

ぐ、と唇を噛み締めてから、この間の出来事を思い出す脳が憎い。僕は、今そんなことを考えている場合ではなくて、僕は、


「はあ。」

ぐしゃり。再度溜め息を吐き頭を掻き乱し、雑念を払おうと躍起になる。

どうかしている。


それでも彼女ばかり
想うのは何故?

(分からない、)
(会いたい?会いたくない?)





100528
私がプレイしたのは
HGです。
あとイタコさんの
口調捏造。




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