求めた
「あれ、ハヤトくん?」
「そう、起きれる?」
軽く揺さ振られ、目を開けると寝起き特有のダルさと、それに上乗せされたダルさに眉を顰めた。目の前には何故か心配そうなハヤトくん。
「あ、マツバさん今帰ったよ。」
「え?ま、マツバさん?」
「?負ぶってもらって帰ってきたんだろう?」
「あ!」
かあ、元々熱い頬が更に熱くなる。そうだ、バイトを早退して、それで、マツバさん、に、
「うわあああ…」
「そこじゃなくて布団で悶えてくれよ。」
勢いよくクッションに頭を押しつけて(あ、化粧移る。)呻くと、ハヤトくんが大きな溜め息を吐いた。
なんてことだ、私はどうやらあのあと眠ってしまったらしい。その上私の家を知らないマツバさんを困らせてしまったのかもしれない。取り敢えずハヤトくんに出会ってくれて本当に良かった。
「…ハヤトさま。」
「意味が分からない。」
鋭いつっこみをしてくれたハヤトくんは、台所の方で何やら冷凍庫をあさっている。見れば布団もちゃんと敷いてあって、…あれ、しまっていったよね?急に不安になった。あああ、もっとちゃんと掃除しておくんだった…。
(だって、マツバさんがうちに来るなんて思わないもの。)
「思わないもの…!」
「意味が分からない。」
戻ってきたハヤトくんはやっぱりちゃんとつっこみをいれてくれた。その手には氷枕。それを布団に置いて立ち上がる。
「じゃあ何か色々買ってくるから、帰るまでに着替えて布団に入ってて。鍵開けたままでるからな。」
「あい。」
ずび、鼻をすするとハヤトくんがティッシュを指さす。
「鼻はかむ!」
「はい…」
「戻る前に寝てもいいから、ゲンガーは出しておいて。」
帰るときゲンガーに戸締まりを頼むのだろう、ハヤトくんは玄関の扉に手をかける。
「ありがとう、オカン…」
「おれはナマエを産んだ覚えはない。」
ぱたん、静かに扉が閉まった。彼は本当に世話焼きである。いい幼なじみを持ったなあなんて笑っていると、ゲンガーがぴったりくっついてきた。冷たいのが気持ち良くて抱き寄せる。
「冷たー…」
「ゲゲっ」
にまにまと笑っているけれどどこか心配そうなゲンガーが、冷たい手の平を私の額に押しつけた。心地よさに目を閉じる。
…ああ、早く着替えなくちゃ。ぐずぐずしている暇はない。有りもしない幻想を想う暇なんて、ないんだ。
求めたのは、彼
(贅沢思考。)
(ハヤトくんにゲンガーに、謝れ)
100527
ハヤトと幼なじみに
なりたかった
そしてハヤトの口調は
あとで直すか、も
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