『お妙さぁぁぁん!!』 あの人のこえが、ひびいて、 銀さんのバイクに、飛びのった。 ――――きっと銀さんは偶然現れたのではないだろう。おおかた新ちゃんあたりがこっそり彼に連絡したにちがいない でも、今はそんなことも気にならないほど、あたまの中はぐちゃぐちゃだった。 『真選組局長の近藤勲を見なかったかい』 『ああ、あの人なら、あっちの方角へ歩いていきましたよ』 ――――――だって、だって。 どんなにひどい仕打ちをしても、あの人はたちあがってきたんだもの こんかいだっていつものように、「僕は死にましぇん」とかなんとか言って、わらいながらおきあがる、はず、だったんだもの そうして、いつものように、わたしにわらいかける はず だった のに 銀さんの背中にしがみついて、わたしは大声をあげて泣いた。 銀さんは何も言わずに、いっそう強くアクセルをふみこんだ。 病室につくと、真選組の隊士たちが「姐さんがきた」とボロボロ泣いた 病室の白いベッドに寝かされた彼は、たくさんのチューブにつながれてねむっていて、脂汗の浮かんだ顔は蒼白だった。 ひゅう と背筋がつめたくなる 「さっき峠は越えました。まだまだ予断は許されない状況だそうですが、今のところは安泰です」 隊士のひとりがそう言って、そのあと 「姐さんが来たからにはもう大丈夫ですね」 疲れきった顔でにっこりとわらった 「――じゃあ、おれたちは外で待ってるから、お前はそばにいてやんなぁ」 銀さんたちがぞろぞろと病室を出ていって、わたしは近藤さんとふたりっきりで残される 「―――――近藤さん、」 こえをかけても返事はない。 そっと、その手を握りしめた。 「―――――近藤さん、」 涙があふれて止まらなかった NEXT→ |