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外に出るとひやりと冷たい風が頬を打った。吐く息が白くのぼっては霞んでゆく。冬の空は澄んで高く、針で穴を開けたような星が空一面に輝いていた。

「きれいね」
「寒いだけじゃねえか。ほら、しっかり歩けよ」

銀時は素っ気なく返して妙の背中を軽く擦った。
「つまんない人ね」
妙は不満げに頬を膨らます。

お妙が飲み過ぎちゃったのよ、ちょっと迎えに来てくれない?
彼女の同僚がそう電話を寄越したのはおおよそ20分前のこと。返事を聞く間もなくその電話はぶつりと切れた。誰が行くか、と思った銀時だったが気になるものは仕方なく、彼女のキャバクラまでわざわざ足を運んだのである。
銀時が着いた頃には彼女も随分醒めてきていてよろめきながらも歩いて帰れる程度であった。
そうして二人、ぶらぶらと家までの道をなんとか歩いているのである。

早足に歩く銀時だが数歩離れてはちらりと後ろを振り返り、妙が追いつくのをさりげなく待った。気付かれないように気遣う銀時が妙には嬉しくて仕方がない。
突き放すようでいて面倒を見ずにはいられない、そんな銀時に妙は恋をしているのだった。


「銀さん、ねえ銀さんったら」
少し離れた背中に声を掛けると銀時は面倒くさそうに振り返る。冬の闇の中、銀時の柔らかな髪が薄ぼんやりと光を照らす。
「銀さんはいつだって駆け付けてくれるのね。困った時はいつでも、気付けばあなたがいるんだわ」


魔法使いみたい、と妙はくすくすと楽しそうに笑った。
まだ酔ってんの、と銀時は呆れた声を出す。

「ほら、まっすぐ歩け」

銀時の指が妙の掌をぐいと掴んだ。妙は驚いて息を飲む。
冷たい外気に晒された銀時の指は冷たかった。銀時の大きな手に包まれて妙の指は随分と小さく見えた。

手を引かれて歩く。暗闇の中、見えるのは銀時の背中ばかりだ。今頼れるのはこの指だけだ。

「銀さん、ねえ銀さん」
「なんだよ」
呼べばいつものように気怠い返事。

「好きよ。大好き」


ぐ、と妙の掌に掛かる力が強くなった。

酔ってんじゃねーよ馬鹿、とやがて銀時はふわりと笑った。
酔ってなんかいないわ、と膨れた妙の頬はひたすらに熱い。


使









あきゅろす。
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