「好きな女のタイプだぁ?」
男子高生の昼休みというのは往々にして暇を持て余しているもので、今日も今日とて俺たちは購買のパンを片手に昨日のテレビや昨今の行政や新作のゲームソフト(モンキーをひたすらハントするやつ)についてなどなど非常にしょーもない会話を飽きもせずに繰り返していた――いや実際には飽きていたのだろう、「好きな女のタイプ」なんて散々繰り返されてきたこの話題をはじめに持ち出したのは辰馬であり、「ずばり人妻だな」と素早く応じたのがヅラだった。ったく、とことん暇なやつらだな。
「ったく、とことん暇なやつらだな」
なんてこった、土方の野郎と思考がかぶった!心底死にてえ。
「俺は志村さんだな!」
それはもはやタイプではない。
「総悟は?」
近藤に話を振られた沖田はさっきまでピコピコやっていたゲーム(モンキーをひたすらハントするやつ)から顔を上げて、「俺?」とひとつ瞬きをした。
こいつのことだ、どうせまたエスっ気全開の珍回答を繰り広げるかと思いきや。
「そうさねぇ、」
ちら、と横を見やった沖田の視線の先に、ピンクの髪の留学生。
「……やっぱ気の合うかわいい奴ですかねぃ」
そう言った沖田の言葉に、見る間に神楽の頬が染まった。沖田は満足気ににやりと笑ってまたゲームへと視線を戻す。
…ほほう。そういうこと。お熱いことで大変結構ですねコノヤロー。
「次はアンタの番ですぜい」
沖田は不意に俺を見上げて、くいっと顎を教室へ向けた。その先に、このクラスの学級委員であり俺の付き合いたての彼女である志村がいる。…って、誰にも言ってねぇのになんで知ってんだこのやろう。
しかしこれはチャンスである。志村もこちらの会話に気付かないようなふりをしながら、耳を澄ませているようだ。おお、顔がにやけるぜ。何て言ってやろうか。
「金時はおっぱいのでかい女が好きじゃきに!」
そこでいきなり声を上げたのが坂本である。
ちょっとマジこいつ何言ってんの!?
いや好きだけど!大好きだけど!よりによってまな板の志村の前でその発言はやめてくれ!
ちらりと志村の方を見やる。笑顔だ。
笑顔から辺りを燃やし尽くさんばかりのどす黒いオーラがメラメラと放出されていた。
「行くわよ神楽ちゃんっ!」
ものすごい勢いで志村が教室を飛び出してゆく。
まずい、非常にまずい。
「金時い、どこ行くんじゃ〜」
「――便所っ!」
走れ!
戦争勃発3秒前!
――――
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