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「――どうやらとうとう尻尾つかまれたみたいでさァ」

帰って来るなりそう言った総悟は首もとのタイをうろんげに外して深く重い溜め息を吐いた。そう、と私は短く答えて総悟と同じ溜め息をひとつ。

逃げようヨ、とあるいはそう言うこともできたのだけれど私たちはどちらもそれを切り出せないまま小さな部屋に座り込む。左肩にじわりと広がる温もりに私はそっと瞳を閉じた。

――どんなに逃げたって結局逃げ切れやしないのだ、警報の音はきっと明日にでもこの穏やかな街を取り囲む。
それを知っている私たちは静かに肩を寄せ合って、ただ別れの気配をそれぞれに感じ取っていた。


あるいは、と総悟の隣りで私はぼんやりと考える。
(あるいはいっそ、ふたりで死ぬことだってできるアル、)
私はそれでも構わない。拳銃は過不足なく2丁ある。

(でも、)

総悟の手をそっと握った。

(――でも私、これから総悟の先に続く、どんな未来も愛してる)

生きていて。
それは今私が総悟に望むたった一つのことだった。




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