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秋桜
1
我が家には門限がある。
PM7時?
いや、違う。
なら6時?
それも違う。
時間を聞かれて何時か言えるのなら、まだマシ。
言えないのは溜め息物だ。
一体どういう事か説明しよう。

[お疲れ様連理]
[・・・ありがと・・]
毎日校門で出待ちしている美形。
[さぁ乗って?]
開けられる赤い高級車の助手席の扉。
車体の色は、買う時[何色が良い?]聞かれ俺が[赤]と答えたからだ。
[ぅん]
座り心地の良い椅子に身を委ねると
[閉めるよ?]
シートベルトを装着されてから閉められる。
[お待たせ]
運転席に座りシートベルトをすると言われたセリフ。

[帰ろうか?]
物凄い美形に爽やかに微笑まれながら言われると
[うん]
誰だって抵抗出来ない筈だ。多分。

そう、俺は毎日登下校を瑛理としている。
コレは毎日欠かさず行われている事で、どうやら我が家は異常な位過保護なのらしい。

俺は瑛理が大好きだ。
スッゴク格好良いし、頭も良いし、運動神経も良い。
要領迄良い為、不可能な事なんて何も無いのでは?と思える位完璧なのだ。
つまり瑛理は、万人の理想と言っても過言では無い位出来た人間で、自慢の父親。
大人になったら、瑛理みたいな男になりたい。
幼き頃はそう考えてた。
なのに全然近付けない俺。
瑛理曰く、どうやら俺は母親に似たらしい。
俺が2歳の頃、母は亡くなった。
原因は交通事故みたいな物だが、そうでもないらしい。
眩暈を起こし倒れた時に車に轢かれたのだから、運転手も故意的に轢いたワケではない。
病気を理解していた家族は、運転手を責めなかった。
って、話逸れたな。

「ただいま」
玄関を開けると
「おかえり」
言われるセリフ。
一緒に帰宅しておきながらこのセリフって、なんかおかしくないか?
まっ、嫌じゃないし良いか。

チュッ、奪われる唇。
おかえりなさいのチュウ。

我が家ではキスは挨拶だ。
勿論それ以外でもするけどね。

「ねぇ瑛理」
唇が離れた瞬間見上げた顔。
「ん?」
「明日寄り道しても良い?」
「何処か行きたいのか?それとも何か欲しい?」
優しく聞かれ
『やっぱこう来たか』
引きつった。

『う〜ん、言いにくいなぁ』

実は今日昼休み、明日放課後遊びに行く話が出たのだ。
いつもは断るが
[なんだよ連理。付き合い悪いぞ?]
ポツリ呟かれて
[ごめん。行くよ]
つい言ってしまった。
だって付き合い悪いってレッテル貼られたら、この先人間関係崩れちゃうかもだろ?
そんなの嫌だしさ。
小学校の頃はソレで何回か嫌な想いしちゃったから、中学で迄はしたくない。

「あのね、俺明日友達と遊びに行きたいんだ」
ドキドキしながら告げると
「そうか。なら仕方ないな」
『あれ?』
瑛理は微笑んでくれた。
『なぁ〜んだ。頼めば大丈夫じゃんか』
ホッとした。

が、
「5時には帰宅しろよ?」
ニッコリ綺麗な笑顔で言われ
『5時はないだろ。5時は』
激しく引きつった。

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あきゅろす。
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