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秋桜
退屈な日常
俺の名前は久河瑛理(くが えいり)。
「久河。今回も頑張ったな」
笑顔で渡される答案用紙。
その台詞だけで自分が何点取れたか理解出来る。
多分全問正解。
《惜しかったな》で1・2問
《体調でも悪かったのか?》で3・4問のミス
って俺は間違ったらいけないのか?
「次も頑張れよ」
キラキラした期待しまくりの瞳を送られ
「はい」
事務的な返事とは裏腹にフワリ微笑んでやった。
所謂大人が喜ぶ優等生スマイル。
満足げな教師から離れると席に戻る。

眉目秀麗。
昔から言われ続け、親戚に無理矢理させられたモデル。
学校では教師から勉強とスポーツを
職場では完璧な美を追求され
俺は毎日疲れ切っていた。
俺の人生において気の休まる時間は自分の部屋で寝る時位だ。

「久河様」
「会長」
会長の呼び名は生徒会長をしてるから。
様付けは幼少の頃から周囲が勝ってに付け始めた。
休み時間になると必ず出来る人だかり。
勝ってに親衛隊やファンクラブ迄作ってさぁ、俺は見世物パンダか?
「今日もお美しい」
「目の保養になります」
お前らソレしか言えないのか?皆外面ばかり見て誰も中身を見ようとしない。
夢や理想や願望ばかりな羨望のまなざしで見詰められても微塵足りとも嬉しくない。
気が付くと100点満点な営業スマイルが得意になっていた。

つまんねぇ毎日だ。




いつもと何ら変わらない日常。
愛想笑いと仮面を被り周囲の羨望のまなざしに侵される俺。
誰か1人でも良いから内面を見て欲しい。

「おはようございます」
嬉しそうに挨拶され
「おはよう」
笑顔で返すと異常な位喜ばれた。

なんだその反応?
挨拶位《おはよ》とか《よっ》とか軽いもんで済ませよ。
疲れる。
溜め息を吐きたくても《どうされたんですか?》とか《フェロモンが》とか言われるから我慢するしかない。
フェロモンって何だ?
んなの出してるつもりなんかサラサラねぇよ。


気怠げに脚を動かす。
今は仕事後。
さっき迄花畑で撮影をしていた。
フワリ良い香りが鼻を掠める。
一面の花畑。
咲いているのは秋桜。
俺の好きな花だ。
花は癒される。
静かだからな。
軽く伸びをしベンチに腰を降ろした。
目を閉じると良い香りと風の音。
心地好い。
ゆっくりと睡魔が近付いてきた頃、カサッ。足音がした。
目を開けるとソコには綺麗な顔があった。
誰だ?
知らない女性。けれど何故か見た事がある。
これだけ綺麗な容姿だ。
多分モデルか女優関係だろう。
凝視したせいで目が合った。
ヤバいな、ガン見してしまった。
睨んだと勘違いされただろうな。
苦笑した。

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